アカデミックホームステイに参加したある中学生のホームステイ記録(日記)です。彼女がホームステイの中で、何を感じ、何を思い、何を考え、何を得たのか。
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筆 者: 濱 田 純 逸 ●はじめにアンカレッジ空港から成田までの飛行機の中で、最初にこの生活記録を読んだ感動は忘れられません。約530名もの中学生を1ヶ月間のホームステイのためにアメリカへ引率し、プログラムを終えてその最後の責務に従事している中、機内で多くの参加者達からノートに寄書きを書くように頼まれました。長い機内での手持ち無沙汰も手伝って、ひとつひとつ書いているさなか、偶然にも、回って来た寄せ書きのノートの中に、この生活記録を発見したのです。最初は何気なく拾い読みしていたものが、だんだんその内容の濃さに興味と興奮を覚え、後は引きずり込まれるように読み切ってしまいました。もちろん、本人には無断のことでした。 ホームステイを始めて、かれこれ30年になります。これまでに約一万五千名の生徒がアメリカの家庭に滞在して、それぞれの異文化生活を体験してきたのですが、私には、彼らの家庭生活の一部始終を知る由もありません。それは「様々」という言葉でしか表現しようがありません。確かに彼らは、ホームステイ中の生活の断片は語ってくれます。「楽しかった話」とか「涙を流した話」とか「苦労した話」とか、これまでいろんな生徒が、私にそんな話をしてくれたものでした。でも、私の最も興味ある事は、そんな断片的な話ではなく、彼らのアメリカの家庭における継続的な「日常性」であり、具体的な生活上の「現実」であり、さらには、ホームステイを通しての彼らの内面的、精神的な変化でした。つまり、参加者がホストファミリーとのふれあいや交流、日常的な異文化の生活を通して、どのようなことを感じ、何を考え、どのような思いをしながら実際の生活を過ごしているのかということは、主催者の最大の関心事であるにもかかわらず、この全体的なプログラムの俯瞰図を知ることは、非常に困難でほぼ不可能に近いことでした。朝、学校へ来て、午後からの活動(スポーツとか博物館見学など)が終わり、生徒達は各家庭へ帰って行き、そしてまた明朝に学校へやって来ます。私が最も知りたいのは、このような朝からタ方までのグループの活動てはなく、家庭に帰ってからの、一人になった後の生徒とホストファミリーとの「日常性」であり、「生活の様子」であり、「ふれあい」なのですから、それを知る手立ては全くなく、まるで雲をつかむ様な茫漠たるものだったのです。毎年の参加者が約七百名、それぞれの参加者が各家庭でどの様に暮らしているのかを知りたいと思いつつも、現実となることは決してありませんでした。 そんな中、アンカレッジ空港から成田までの帰りの中で、偶然にもそれを日記と言う形で読むこととなった私には、彼女の生活記録は、少なくとも、私に、私達が行なっている「ホームステイとは何か」を、私達が想像していた通りに具現化してくれるものでした。そして、私達が理想とする「ホームステイプログラムのあり方」を実践してくれるものでした。帰国後、彼女と彼女の両親のご理解とご協力を得て、その全部を読まさせていただきました。彼女から送られてきたその原本を自宅に持ち帰って、ほとんど徹夜でじっくりと読みつづけました。そのときの感動は未だに忘れることが出来ません。彼女の豊かな感性の中にも、確かで、着実で、客観的な異文化との折合いと、彼女の動揺と内面的な変化が、その中にしっかりと綴られているのです。この記録は、異文化の中で彼女が苦悩した魂の記録と言ってもよいかもしれません。常に自分と真剣に見つめ合った参加者の成長の記録でもあります。 これを書くにあたり彼女の家を訪ね、彼女の両親を交え、約6時間程の間、私は彼女に質問をあびせました。それも、「事実」だけを、より正確な「現実」を掲載したかったからに外なりません。彼女の日記との出合いは、全くの偶然であり、何ら私意はありません。ですから、ここに紹介するにあたりホームステイ期間中のものを全くの推敲なく、削除することなく、掲載いたします。そして、彼女がホームステイの中で、何を感じ、何を思い、何を考え、何を得たのか、ひとつひとつを注意深く検証し、考えて見たいと思います。そして、一生徒のホームステイ体験記というだけでなく、主催者側から見た実際的な、そして典型的なホームステイの真の有様として、全くの現実を紹介してみたいと思います。 なお、注釈については、面談時の内容を基にした筆者の加筆であり、筆者の意見と分析で構成されています。また、生活記録中のの表現方法やかな遣いは、出来るだけ原文通りにしております。また、参加者を始め、登場人物は全て仮名です。
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