アカデミックホームステイに参加したある中学生のホームステイ記録(日記)です。彼女がホームステイの中で、何を感じ、何を思い、何を考え、何を得たのか。

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■ はじめに 目次 登場人物
■ 01日目 07月31日
■ 02日目 08月01日
■ 03日目 08月02日
■ 04日目 08月03日
■ 05日目 08月04日
■ 06日目 08月05日
■ 07日目 08月06日
■ 08日目 08月07日
■ 09日目 08月08日
■ 10日目 08月09日
■ 11日目 08月10日
■ 12日目 08月11日
■ 13日目 08月12日
■ 14日目 08月13日
■ 15日目 08月14日
■ 16日目 08月15日
■ 17日目 08月16日
■ 18日目 08月17日
■ 19日目 08月18日
■ 20日目 08月19日
■ 21日目 08月20日
■ 22日目 08月21日
■ 23日目 08月22日
■ 24日目 08月23日
■ 25日目 08月24日
■ 26日目 08月25日
■ 27日目 08月26日
■ 28日目 08月27日
■ 29日目 08月28日
■ 30日目 08月29日

筆 者: 濱 田 純 逸

●08月07日 木曜

昨晩、手紙を二通書いたために、寝るのが12時半頃になってしまった。キャシーが「勉強がたくさんあるのか?いつでもしていいけど寝るのは10時頃【注031】にしなさい。」と英語でさかんに言っていた。体が心配だそうだ。でも、いつ日記を書けというのだ!! むずかしいな・・・。今、夕方だよ。今日は一日何もおもしろいことがなかった。広場に行って野球をしたけれどわからないし、チームワークがかたまらない。午後からの英語の授業は、もっとおもしろくなかった。なにせ、一時から四時までぶっ通しだもの。びっくりしちゃう。でも明日の楽しみが大きいから、マッ、いいか。お兄ちゃんにTシャツでしょう。ゆうこちゃん【注032】に・・・。ここシアトルは九時頃、やっと夜がくれる【注033】。それでその頃子供は寝ることになるらしい。Ohton家では、いつも本を読んでくれている(寝る前に)。子供達はそれをすごく楽しみにしている様だ。それはとてもいいのだけれど、食事がすごくまずしい【注034】。おかしみたいなものだ。日本の食事のごうかさが目にうかぶ。いつもおかあさんに文句言ってすごく悪かったと思う【注035】毎日。家に帰ったら【注036】、まっさきに肉やさし身を食べたい。昼食もサンドウィッチ一個に、もも一個だもんなあ。アーア、おなかへったよ・・・。それでいて、ここは太った人が多いのが不思議だ。

注031
日本の就寝時間が午後11時〜12時頃とすれば、アメリカの家庭の就寝時間は、午後9時〜10時頃である。また、起床時間を日本が午前6時〜7時頃とすれば、アメリカは午前5時前後である。彼女が午後10時までと言われたのは、一般的な価値観であり、お世話している子供だからと言う特別な配慮からなされているものではない。宿題があろうが、用事があろうが、それらには関係なく、子供は遅くとも夜10時までには寝なければならないというのが、アメリカ社会通念上の親の価値観なのである。
注032
小さい時からの幼ななじみ。
注033
彼女の滞在したシアトル近郊は日本の北海道の北に位置しており、夏時間も採用していることもあって、日が暮れるのは時間的には遅くなる。
注034
先述したお弁当だけでなく、アメリカの食事は日本と比較すると、極めて質素であり、単調なものが多い。それは食材が少ないことからも言える。特徴的なことは、加工食品が多く、生鮮食品が少ないことである。また、高カロリー、高脂質のものが多い。事前学習会で食事に関して事前に説明しているものの、ほとんどの参加者は現場で目の当たりにして、それを実感することが多い。「百聞は一見に如かず」とはよく言ったもので、いくら口頭で説明しても、実感を伴わない情報は、情報としての価値を有していないようである。
注035
普段は何も考えず、人にとって慣れ親しんだ環境は、全てあたりまえのことである。子供が勉強するのも、父親が働き、母親が家事をすることも何の疑問なく、受け入れてしまう。その環境に育ったものには、それが絶対的であり、それが全てである。ところが、異文化でホームステイして家庭生活を送れば、自分の日本の生活環境を相対的に見ることができる。これまであたりまえだと思っていたことが、そうではなくて、また異なる方法や現実があることを思い知らされる。ここで彼女がつぶやく「文句を言って悪かったと思う」という一言は、日本でいくら自分の生活環境の豊かさを周囲のものから諭されても、おそらく決して出てこない一言であろう。「親に感謝しなさい」といくら親が言っても、本人にその自覚がなければ無理なのであって、この一言もホームステイならではの述懐の一つであろう。
注036

「家に帰ったら……」という前提で、帰国してからの決意や決心を述べるものがこれから随所に散見される。ここではアメリカでは満たされないものに対する、単なる帰国後の願望であるが、これが日が進むにつれて、異文化で触発を受けたものやことに対して、その触発を受けて帰国後どのように善処するか、向上していくかという、前向きな姿勢を綴るものが多くなっていく。私はこの姿勢が醸成されることが、異文化に触れる最高の価値の一つであると考えている。だからこそ、若ければ若いほど異文化に触れる価値が、より効果的であると考える。

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登 場 人 物
中学二年生のホームステイ参加者/鹿児島県出身 田中みゆき
ホストファーザー/ワシントン州シアトル市在住 ジム アレトン
ホストマザー キャシー アレトン
7歳の双子の姉 ラナ アレトン
7歳の双子の妹 キム アレトン
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