アカデミックホームステイに参加したある中学生のホームステイ記録(日記)です。彼女がホームステイの中で、何を感じ、何を思い、何を考え、何を得たのか。

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■ はじめに 目次 登場人物
■ 01日目 07月31日
■ 02日目 08月01日
■ 03日目 08月02日
■ 04日目 08月03日
■ 05日目 08月04日
■ 06日目 08月05日
■ 07日目 08月06日
■ 08日目 08月07日
■ 09日目 08月08日
■ 10日目 08月09日
■ 11日目 08月10日
■ 12日目 08月11日
■ 13日目 08月12日
■ 14日目 08月13日
■ 15日目 08月14日
■ 16日目 08月15日
■ 17日目 08月16日
■ 18日目 08月17日
■ 19日目 08月18日
■ 20日目 08月19日
■ 21日目 08月20日
■ 22日目 08月21日
■ 23日目 08月22日
■ 24日目 08月23日
■ 25日目 08月24日
■ 26日目 08月25日
■ 27日目 08月26日
■ 28日目 08月27日
■ 29日目 08月28日
■ 30日目 08月29日

筆 者: 濱 田 純 逸

●07月31日 木曜

飛行機から見たシアトルの市内のすばらしかったのが、目にやきついている。出発する時のあの心細さ【注001】がきえてしまったようだ。あまり気のあう友が見つからないのと英語がむずかしいのがちょっびり心配だけど。機内食がすごく楽しみだったんだけど思っていたのよりインスタントぽくてがっかりした。あんまりおいしくもないし……。ずうっと緊張してて【注002】、結局、睡眠時間二時間弱!。ねむたいよー、ねむたいよーの連発。〔外人について〕おおらかでした。〔スチュワーデスさん〕すぐ話しかけてくる。気がるさ。話しかけてくるのだが、すごく、困ってしまう……。っていうのは、何言ってるのかわからないから。アーア、みんなは、家族の写真を【注003】持っていて、どこへいくのかわかるからいいけど……。私はどうなんのヨー!。今日一日、心配と心細さとめずらしさでいっぱいだった。

注001
出発時の参加者の心細さは相当のものがある。出発前にはかなり多くの参加者が「行きたくない」と口をそろえて言う。中には、出発の数ヶ月前からそれを口にするものもいる。ホームステイをすることは、未知のものに対する自分との戦いである。未知への不安から行きたくないという気持ちもあれば、未知への好奇心から行ってみたいという夢と冒険心と興味も混在している。その狭間の中で出発前の参加者の心は大きく揺れ動いている。但し、それは保護者と別れて出発するまでの心境である。特に、成田空港を発った後は、未知のものに対する夢がより広がる。覚悟を決めるのである。観念するのである。そのような参加者の気持ちが窺える。
注002
海外が初めての参加者は、成田の出国手続きから緊張の連続である。例えば、命の次に大事といわれたパスポートの所持だけでも、中学生の神経をすり減らす。隣席の外人さんに動揺し、慣れない機内食に味覚はなく、少しの機内の揺れに身体中から汗が出る。初めて踏む異国の地に興奮しながらも、入国審査の英語の質問に血が逆流する。入国エリアのどこを向いても外人だらけの雑踏に圧倒され、空港に氾濫する英語活字のどのひとつも理解できない自分の混乱。車窓の異国の景色も、ホストファミリーとの対面前では心はなく、慣れない英語をひたすらそらんじている。手は氷のように冷たくて、唇は乾ききって、目だけはただ遠くを見つめている。何を聞かれても「イエス」だらけの参加者と、ままならないコミュニケーションに天を仰ぐホストファミリー。そのファミリーに引き取られていく参加者の、後姿は痛々しい。
注003

出発前にアメリカのホストファミリーから直接、本人に写真が同封された手紙が送られてくる場合があるが、彼女には葉書だけが送られてきている。以下はその葉書の内容である。

田中夫妻及びみゆき様

初めまして。私はキャシー・アレトンと申します。主人はジムといいます。私達はみゆきさんと一緒に生活できるのを今から心待ちにしております。私達には双子の女の子がいまして、名前はラナとキムといい、七歳になります。二人は、それほど似てはいませんので、すぐ見わけられると思います。私達は「ダッチ」といううさぎを飼っており、隣りにはすばらしい犬もいて、時々、彼は我が家に遊びにきてくれますので、みゆきとも仲良くなり、ホームシックにかからないように慰めてくれることと思います。私は、州公認看護婦として週四日働いていますが、昼間、みゆきの授業が終わる頃には帰宅しております。私達も少しですがギターを弾きます。音楽は楽しいものですね。私の家の庭には野菜や花を植えております。みんな自然の花ですから、みゆきが気に入れば、それを摘み取ってかざることもできますよ。シアトルでは漁業がとても盛んです。多くの人が漁業に従事しています。みゆきがこちらに滞在している間に、友人の船に乗せてもらって海に出かけることもあると思います。私達は車がありませんのでバスを利用したり、歩いたりしています。ですから交通事故の心配も無用ですよ。会える日を楽しみにしています。さようなら

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登 場 人 物
中学二年生のホームステイ参加者/鹿児島県出身 田中みゆき
ホストファーザー/ワシントン州シアトル市在住 ジム アレトン
ホストマザー キャシー アレトン
7歳の双子の姉 ラナ アレトン
7歳の双子の妹 キム アレトン
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