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筆 者: 濱 田 純 逸
●08月13日 水曜
昨日「サンドウィッチ一個じゃ少ないヨ」といったのが通じたらしい。今日はなんと、サンドウィッチニ個にみかん、クッキーつきだった。もう、しあわせ【注060】ですよ。久々におなかいっぱい食べた一日だったけれど、すごく疲れてスージーさんの家で「ピアノをひいて!」と言われたけれど、ことわってしまった。キャシーが心配して薬(なんなのかわからん)を飲ましてソファに寝かしてくれた。みんなは、早く日本に帰りたい【注061】、帰りたいと言っている。私も少しは、それに入るんだけど、ホストに悪いな。体はぐったり疲れているけど、後の短い時間を少しでも有効に使って、何か日本にもって【注062】帰らなくっちゃ。生の英語が聞けるのなんてすごくHappyなんだから。こっちに来てから約二週間、もう半分終わってしまったんだな。アメリカっていう国は複雑なところ【注063】だ。人種も黒人、白人、黄色人さまざま。家も日本とちがって個人個人特徴のあるのに住んでいる。バカも多い。人殺しも多い。めったに一人歩きはできない。そうかと思うと、どこの家にも庭いっぱい花を植えて、草のはえている家はほとんどない。本当にわからない。このごろ発見した【注064】こと。(1)車の前に二個ついているはずのかがみが、運転手側のドアに一個しかついていない。(2)車の定員オーバーというのが、後ろの方にはほとんど関係なくて、運転手のいる前にだけきびしい。(3)電話のひもがすごくながくて、電話で話しながら台所で料理にはげむ。(4)食料品は中身でしょうぶする。ふくろや外側の入れ物は、ものすごくまずしいものですませている。(5)家の仕事は男女平等に行う。(台所仕事も)
注060 |
昨日、勇気を持って進言したことが功を奏して、本日のお弁当の内容に反映した。その中身を見て、言ってよかったと彼女自身思ったことは間違いない。問題を自分だけで解決できた喜びと、勇気を出してやったことの喜びが、「もう、しあわせですよ。」というこの表現に凝縮されている。決して、弁当の内容が豪華であったことに対する喜びだけだとは思わない。
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注061 |
着いてから二週間、この頃は大分生活に慣れているはずであるが、日本の生活への郷愁も依然としてたちがたい様子であることが窺える。
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注062 |
極めて向上心が感じられる一言である。異文化生活で少しでも多くのことを体験し、多くの価値を手に入れたいという姿勢が露骨に表れている。
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注063 |
二週間過ぎ去ってしまったという感慨の中から、ひと通りの総括を試みようとしているのがよくわかるし、その姿勢が高く評価できる。そして、異文化に到着しての数日が、驚きと戸惑いと興奮の中で推移していたものが、総括的に、俯瞰的に、冷静にアメリカ全体を見ようとすればするほど、考えれば考えるほどアメリカの多面性と多様性に苦しんでいることが窺える。そして、「アメリカっていう国は複雑なところだ。」「本当にわからない。」となってしまう。でも、矛盾したり、複雑であるとは感じても、個々にある現実や現状は的確に理解している。
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注064 |
これ以下の、彼女の的確な観察力と判断力には敬服する。運転もしない彼女が、何故(1)や(2)に気づいたのかわからないが、単なる好奇心や向上心がなせるものだろうか。いずれも事実であるし、これらのことにも異文化の異なる価値観が反映している。(3)も事実であるし、それだけアメリカ人は電話での長話が多いということであろう。(4)このような姿勢はアメリカ人の至る所に散見されるものであるし、(5)も全くその通りである。この5つを、このごろ発見したこととして日記に記す彼女のホームステイは、信じられないほど価値の高いものであり、これほど理想的な中学生の異文化体験学習者がいるだろうかと、予感させられる。
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登 場 人 物 |
中学二年生のホームステイ参加者/鹿児島県出身 |
田中みゆき |
ホストファーザー/ワシントン州シアトル市在住 |
ジム アレトン |
ホストマザー |
キャシー アレトン |
7歳の双子の姉 |
ラナ アレトン |
7歳の双子の妹 |
キム アレトン |
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