アカデミックホームステイに参加したある中学生のホームステイ記録(日記)です。彼女がホームステイの中で、何を感じ、何を思い、何を考え、何を得たのか。

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■ はじめに 目次 登場人物
■ 01日目 07月31日
■ 02日目 08月01日
■ 03日目 08月02日
■ 04日目 08月03日
■ 05日目 08月04日
■ 06日目 08月05日
■ 07日目 08月06日
■ 08日目 08月07日
■ 09日目 08月08日
■ 10日目 08月09日
■ 11日目 08月10日
■ 12日目 08月11日
■ 13日目 08月12日
■ 14日目 08月13日
■ 15日目 08月14日
■ 16日目 08月15日
■ 17日目 08月16日
■ 18日目 08月17日
■ 19日目 08月18日
■ 20日目 08月19日
■ 21日目 08月20日
■ 22日目 08月21日
■ 23日目 08月22日
■ 24日目 08月23日
■ 25日目 08月24日
■ 26日目 08月25日
■ 27日目 08月26日
■ 28日目 08月27日
■ 29日目 08月28日
■ 30日目 08月29日

筆 者: 濱 田 純 逸

●08月22日 金曜

今年、初めて泳いだ。コートを着ないといけない【注098】くらいに寒いのに、無理して泳いだらこおっちゃいそうだった。二度とあんな所で泳ぎたくない。真水の所で泳いだんだけど、小ちゃな湖で中央に大きな板がうかんでいた。ばかな私はがんばってそこまで泳いだんだけど、もう必死。途中で死ぬかと思った。すごく深いんだもの。帰りは平泳ぎの顔上げて。前が見えるとすごく安心して泳げる。みんな口びるまでまっ青にしてブルブルふるえていた。その後すぐ昼食。ホットドッグのおいしかったこと、おいしかったこと。もう最高よ!! 帰ってこんどはおみやげを買いに行った。けっきょく二つしか買えなかったけど。鹿屋のおばあちゃんに髪かざり、お兄ちゃんにリュック。おばあちゃんのはフラン又製、だってすごくきれいだったんだもの。お兄ちゃんのは緑色でU・S・A。黒があればよかったんだけど、さっさと買わないとホストに悪い【注099】。お兄ちゃんには明日またTシャツでも選ぼう。母さんには洋服を。問題は【注100】お父さんだ。考えても考えてもいい案がない。みちこちゃん【注101】にも何かほしいなあ。手紙を書いてくれたお礼に。バズルでもと思ってるけど。さすがに今日は眠い。昨日、予想していた通りだ。このごろ毎日【注102】いろんなことがあって夜は何もできない。自分で言うのもおかしいけど、すごーく勉強がしたい【注103】気分。日本に帰ったらすごく勉強するようになったりして・・・。作文だけは書こうと思っている。題は「私の初体験」かなあ。

注098
彼女のホームステイしたシアトルは人口約50万人ほどで、日本の北海道よりも北に位置している。天気の悪い日は夏でも肌寒い。現地の人は湖や川やプールで泳いでいる人も多いが、日本の参加者の多くは寒さを感じることが多い。
注099

既に、ホームステイを始めて3週間も過ぎ去っているのに、「さっさと買わないとホストに悪い」という気持ちを、依然として彼女は持っている。読者はここを読まれて、彼女がこのような気持ちを持っていることに、ホストファミリーに対する遠慮であり、家族の一員としての垣根を自ら作っているということではないかなどと指摘されるかもしれない。確かに、これが遠慮であるのならその指摘は適切であろう。しかし、これは遠慮ではなく、周囲の人への配慮なのである。私はホームステイを通して、日本の様々な世代層の参加者達の適応に至る過程を見てきているが、適応の過程で日本人の「他人への遠慮」の姿勢は、異文化理解にとっては大きな障壁であるということを知っている。しかし、「他人への配慮」の姿勢は、異文化適応においてはむしろ大変重要な要素で、必要とされる姿勢の一つであるということを知っている人は、数少ない。つまり、「他人への遠慮」は極めて積極的に非生産性を生み出すだけのものであり、「他人への配慮」にはこの非生産性は全くない。むしろ、後者は行為者と被行為者の間の潤滑油として必要欠くべからざるものである。

人間は社会的動物として、他人への配慮を後天的に、高次元で学習する動物である。私が経験的に実感していのは、小学生の参加者では「遠慮」はできても、「配慮」はできないことが多いということであり、中学生の参加者では「遠慮」もできるが、「配慮」もできるという者が少し多くなり、さらに、高校生や大学生になれば「遠慮」も「配慮」もできる者がさらに多くなるということである。すなわち、人間は成長と共に「他者への配慮」ができるようになる可能性のある動物のようである。ホストファミリーが買い物に同行してきてくれて、「さっさと買わないとホストに悪い。」と彼女が考えているのも、ホストファミリーに対する配慮であり、当たり前の行為である。これが幼稚園児だったら、決してそんなことはできないのであるから。

注100
尽きないお土産買いの労苦を、ぜひ日本の保護者には知って欲しい。日記にどれだけこのお土産に関するコメントが出てくることか。異文化学習のために参加した生徒が、お土産という日本の悪しき陋習に振り回されている様子を現場で見せつけられる立場のものとしては、本当に辛いものがある。
注101
彼女のいとこ 。
注102
日本とかアメリカという概念はなく、いつもと変わらず家庭で普段の生活している女の子の日記のようで、彼女の「平常心」をこのような所に感じるのは私だけてしょうか。
注103
さらに、「帰ったら」という前提での自発的、積極的意思がここにも見られる。ここでは、8月17日の「すごーく勉強がしたいこのごろ。」という表現が、さらに強い意思と予感を伴うものへと変化しているのか、もしくは実感しているのか、いずれにしても「日本に帰ったらすごく勉強するようになったりして・・・。」という表現は強烈である。

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登 場 人 物
中学二年生のホームステイ参加者/鹿児島県出身 田中みゆき
ホストファーザー/ワシントン州シアトル市在住 ジム アレトン
ホストマザー キャシー アレトン
7歳の双子の姉 ラナ アレトン
7歳の双子の妹 キム アレトン
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