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筆 者: 濱 田 純 逸
●08月23日 土曜
お父さんから手紙が届いた【注104】。うれしくってしようがない。ホストファミリーに「あなたはホームシック?【注105】」と聞かれて「No」と言ったけど、本当言うとすごく帰りたくなっちゃった。お父さんが手紙の中に、二、三日したらまた書くという所には感激。ポストの前で寝起きしようかしら。二日も続けて日本からの手紙。あと一週間もしないうちにみんなにあえるなんて夢みたいだ。そのみんなにおみやげを選ぶのが【注106】悩みのたね。今日も町に出たんだけど、気に入っても高くて手が出せない【注107】。パズルもキャシーが言った通りニドルだったら買ったんだけど、十ドルはしたぞ。どこかでTシャツを買いたいとジムにたのんだけれど、かんじんの店がもうしまっていてけっきょく今日もフリスビーが二つ買えただけだった。明日も連れていってくれるかしら。明日といえば、もしかしてスキヤキちゃんを作る日じゃないかなー。うわー、どうしよう。I
can make a Sukiyakiなんてみえをはらなければよかった。これも、Tryのうちになるだろうか。それだったらがんばらんといかんなあ、父さんの言葉どうり。ジムは何かあるとすぐ子供達にすごいキスをする。今も隣の子供部屋からおやすみのキスがブッチュ、ブッチュ聞こえてくる。毎日これやられるとたまらないわよ。あの音が耳にこびりついちゃってもう。町を歩いていても目の前でカッブルがブチュブチュやってるし、家でもジムがブチュブチュやるし。どうかなりそうですヨ。外人の女の子がものすごくませて、おとなっぽいのもこのせいかな。私もちよっと変わりばえしないかしら。
注104 |
ホームステイの持つ素晴らしさの更なる副産物は、「手紙」だと私は思っている。夏休み一ヶ月間ホームステイの事前学習会で、私は参加者に「期間中、四回保護者に手紙を書く。」ように指導している。到着後一回、その後、一週間ごとに三週間後まで三回の合計四回である。おそらく、親に手紙を書くことは初めてという参加者は多いに違いない。また同様に、子供に手紙を書くことが初めてという親も相当数いるはずである。これらの行為を通して、遠き異国にいる子は、望郷の思いを胸に、異なる家庭生活環境で自分の生まれ育った家庭を、家族を、親や兄弟を彼らなりに否が応でも考えるであろう。同時に、家庭に残された両親は、突然いなくなった子の空間に目をやりながら、我が子と我が子のいない環境を思い知らされるのであろう。これらの現実を背景に書く手紙というものは、客観性にあふれ、愛情とお互いの思いやりに満ち満ちたものである。手紙を書くとき、案外、人は素直になれるものかもしれない。彼女が「うれしくってしようがない。」と言い、次の父からの手紙を待つ思いを「ポストの前で寝起きしようかしら。」と表現するのも微笑ましいものがある。
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注105 |
手紙がホームシックを誘うものであるという事実が浮かび上がってくる。 |
注106 |
ここにもお土産の苦労である。 |
注107 |
四週間のホームステイの場合、小、中学生のお小遣いは300ドル、高校生は400ドルを上限としてある。もちろん、ほぼ全員がこの上限を遵守している。お金はホームステイのトラブルの中で二番目に多いものである。(ちなみに一番目はホストファミリーとの人間関係である。)「紛失」「盗難」「生徒間の貸し借り」「金銭管理」「無駄遣い」「ホームステイのお買物のツアー化」「ホストファミリーからのクレーム」などが、お金にまつわるトラブルの要素である。
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登 場 人 物 |
中学二年生のホームステイ参加者/鹿児島県出身 |
田中みゆき |
ホストファーザー/ワシントン州シアトル市在住 |
ジム アレトン |
ホストマザー |
キャシー アレトン |
7歳の双子の姉 |
ラナ アレトン |
7歳の双子の妹 |
キム アレトン |
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