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筆 者: 濱 田 純 逸
●08月11日 月曜
ラナとキムは、想像以上に手のかかる子【注051】だった。特にラナは勝手な行動ばかりして私を困らせる。男子につばをかけて喜こんでいたから、頭を二発ほど軽くたたいてやった。キムは怒っているのがわかったらしく、すぐおとなしくなって・・・。7歳だから、これくらいのことはあってもいいことだと思うけど・・・。それでも今日は山下さん【注052】が来たから、なかなか楽しかった。私は積極的になるのが目的だった【注053】けど、あの人はわがままを直したいのだそうだ。明るくて私にはもうしぶんないと思われるけど。人、それぞれなやみが【注054】あるんだな。農場見学の方は、牛より花の方がずっと興味があって、そればかり写していた。すばらしい花園で夢みたいな気分だった。家に帰ったら【注055】、少しずつでも草を取って、花をいろいろ植えたいと思う。あんなに庭が広いのに、もったいないことしてたんだな・・・。父さん達にもみせてあげたい!夕食の後、みんなで私にゲームを教えこもうとしていたけれど、けっきょく私はわからなくて、キムの気分を悪くしてしまった。だって、ねむくてそれどころじゃなかったんだもの。
注051 |
ホームステイも十日目ぐらいになると、ホストシスター達ともかなり親密になってくる。彼女の場合でも、実際の妹達の様に、寛容さを持ちながらも、制止するこころは、はっきりとけじめをつけている様子が窺える。つまり、グループ活動に二人を連れて行ったが、英語力は充分ではなくても、リーダーシップはちゃんと彼女が取っていることが理解できるのである。それに対して、彼女の怒った素振りに、すぐにおとなしくなるホストシスターの反応は、日常の彼女の彼らへの説得力や発言力を意味するものでもある。この関係をここから読み取るだけでも、双子の姉妹にとって彼女は、かなり大きな位置を占めていたことが窺える。 |
注052 |
彼女の住んでいる隣町の生徒で、同じグループの参加者である。 |
注053 |
多くの参加者は、ほとんどが彼らなりの目的を持って参加している。なかでも、環境を変えることによって人間形成に役立てたいと、性格を矯正することを目的とする参加者や保護者も多い。多くを期待されては困るが、私達にも少々の自負はある。事実、帰国後の実態調査では、参加者の約8割の方が、帰国後に性格や生活態度の変化が見られたと答えている。
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注054 |
まるで、大人のような述懐である。他人に対する敬意や配慮、自分に対する謙虚さ、中学二年生、14歳という年齢ではまだ自己本位的な世界が大きいはずだが、この客観性には恐れ入る。
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注055 |
注36で指摘した「家に帰ったら」という前提での、異文化に触発された向上心、主体性、自主性、積極性がここにも顔を見せている。
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登 場 人 物 |
中学二年生のホームステイ参加者/鹿児島県出身 |
田中みゆき |
ホストファーザー/ワシントン州シアトル市在住 |
ジム アレトン |
ホストマザー |
キャシー アレトン |
7歳の双子の姉 |
ラナ アレトン |
7歳の双子の妹 |
キム アレトン |
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