ホームステイとは何なのか。ホームステイでは何が得られるのか。40年以上にわたって、国際交流教育事業に関わってきた南日本カルチャーセンターによるホームステイの現状と提言です。
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執筆者: 南日本カルチャーセンター 代表取締役社長 濱 田 純 逸 ■ 7 始めにトラブルありきホームステイは、異文化で営まれる異言語下の生活です。異文化生活とは、これまでの価値が反映されない、既存の知識が意味を成さない、当たり前のことが当たり前でない、戸惑うことばかりの生活であるということです。異なることを常態とする生活だということです。つまり、ホームステイに参加することは、「文化的戦場」に行くことなのです。異なることに価値があると自他共に認めるからこそ、ホームステイに意義があるわけです。でも、それは諸刃の剣でもあります。つまり、異なることによって「教えられ」「学ばされ」「考えさせられる」生活ではありますが、同様に、異なることによって「問題が生まれ」「困難が生まれ」「危機が発生する」生活でもあるのです。 ですから、「異文化では、始めにトラブルありき」という基本的な考えが、参加者にも、主催者にも必要です。考えてみれば、このことは当然のことであり、自然の摂理ではあるのですが、このことが余りにもないがしろにされ、参加者も主催者もこのことを認識しているようには思われません。その証拠に、もし異文化生活の原始状態を、「始めにトラブルありき」と認識しているのであれば、トラブルはなかなか発生し得ないと断言できるからです。また、発生したとしても、大きなトラブルに発展することはあるはずがないからです。厳しい考え方をすれば、参加者は「トラブルの中」で学ぶ覚悟が必要なのであり、主催者には「参加者は常時トラブルの中にいる」という危機管理意識が、大変重要ではありますが、残念ながら、現実には両者ともに、この「覚悟」と「危機管理意識」は、欠落しているというのが現状だろうと思います。 例えば、手前味噌ではありますが、センター職員がホームステイ期間中、必ず現場に常駐するのは、「始めにトラブルありき」という考えがあるからです。異文化摩擦といわれるトラブルに、即対応するために、現場に常駐する必要があるのです。それは主催者にとっては「義務」だということです。もちろん、参加者に対してだけでなく、受入れ側であるホストファミリーに対する義務でもあります。すなわち、参加者によってもたらされた、両者間の異文化摩擦を緩和するために、主催者が参加者を代表して、受入れ側に対処する必要性が生まれるからであり、また、その逆、ホストファミリーによってもたらされた異文化摩擦を、参加者に対して対処することも起こり得るからです。ですから、常駐してトラブルに対処する職員は、両国の文化と価値を理解し、精通するものでなければ、トラブルの処理には困難が伴ないます。 これらの「始めにトラブルありき」という認識に伴なう主催者の対応策は、異文化理解のプロによる現場常駐という方法論が、最善であるというだけでなく、唯一無比のものであり、これ以外の方法論はありません。願わくば、日本における国際交流事業のすべての主催者が、これらの認識を抱くようになっていただきたいと思います。そうすることで、交流プログラムにおけるトラブルは、激減するだけでなく、トラブルを通して「教えられ」「学ばされ」「考えさせられる」異文化生活という一面性だけが残存し、トラブルに対する参加者の認識までもが、変化することになるだろうと思われます。 |
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