ホームステイとは何なのか。ホームステイでは何が得られるのか。40年以上にわたって、国際交流教育事業に関わってきた南日本カルチャーセンターによるホームステイの現状と提言です。

HOME > ホームステイの現状と提言 - 6 参加者と主催者に求められるもの
 
■ 1 変わりゆくホームステイ
■ 2 変化の背景
■ 3 ホームステイプログラムと
    ホームステイツアー
■ 4 ホストファミリーへの影響
■ 5 一般的な参加者の現状
■ 6 参加者と主催者に求められるもの
■ 7 異文化では、始めにトラブルありき
■ 8 最後に

執筆者: 南日本カルチャーセンター 代表取締役社長  濱 田 純 逸

■ 6 参加者と主催者に求められるもの

 このケースで大切なことは数多くあります。まず、参加者は、英語は言うまでもなく、異文化学習と自文化学習の事前学習を、出発するまでに徹底して行なう必要があるということです。事前学習のない「ホームステイプログラム」は、「観光旅行」に過ぎないと喝破できるかもしれません。そのためには、プログラム主催者は、事前の異文化理解や相互理解、自文化学習の指導のあり方やそのノウハウを絶えず研鑽し、常時学習しながら、参加者に対してその指導を実践すべきだろうと思います。「ホームステイプログラム」の場合、ただ単に、参加者を集めて連れて行くという発想は、余りにも海外旅行的で、娯楽的な発想です。例えば、参加者に対して、20時間の事前学習会を開き、異文化に関する指導を行ない、さらに出発までに英語指導を十日間にわたって行なうというような姿勢が、主催者になければなりません。さもなくば、参加者はこれらの事前指導がないホームステイは、「ホームステイツアー」であるという考えを持つことが大切だろうと思います。

次に、「ホームステイプログラム」において、参加者が期間中にどうやって異文化学習を進めていくかという、ホームステイにおける学習の仕方が問われます。また、どうやってホストファミリーに自国文化の紹介を行い、彼らとの理解や交流を推し進めていくかという、具体的な交流方法や国際理解の実践を、主催者側は参加者に指導すべきです。そして参加者は、主催者によって事前に配布されたガイドブックや手引書の指導に従い、事前に学習した方法で、現場で実践してみることが大切です。この二つは、ホームステイ期間中にも、異文化交流カウンセラーなどからの指導や助言を参加者は必要とします。ですから、主催者側のスタッフが、ホームステイの開始から終了まで、現地に常駐する必要が生まれてくるのです。これらの方法論を事前に指導しない、もしくはできない主催者の場合でも、意義ある異文化学習や交流をしたいという参加者にとっては必須のことですので、市販の本や、国際交流実施専門団体などの発行する指導書や説明書などを参考にして、事前に学習しておかなければなりません。また、先述したように、ホストファミリーの目的に対しても、参加者は目を向けなければなりません。すなわち、ホストファミリーの目的を達成できるのは、参加者でしかないという自覚が必要だろうと思います。もし、参加者に異文化理解や相互理解の学習の意思が欠落していれば、それは同じ目的で参加しているホストファミリーの目的を、喪失させてしまうものであるということに、気づく必要があると思います。

さらに、ホームステイ期間中の活動の内容に、観光旅行的要素が多分に盛り込まれ、それがホームステイではあるけれども、実質的には観光旅行となっていることがあります。当然これは、参加者の問題ではなく、主催者の問題であるわけですが、スケジュールが余りにも娯楽的、歓楽的傾向に満ち満ちていることによって、本来のホームステイの目的から、参加者の目的は離脱していくことになることを、主催者は知っておくべきです。現地の小学校訪問、中学校訪問、高校訪問とか、生徒達との交流会とかは、当然必要でしょうし、老人ホームや病院などでのボランティア活動の実践や、ホストファミリーへの奉仕活動や障害者理解教育、リサイクル活動への参加や環境問題への取り組みなど、「ホームステイプログラム」で手がけている活動内容は、「異文化学習と国際理解」という目的に、真正面から取り組んでいるものであるべきです。でも、これらのものだけが、絶対的な活動内容であると断言しているわけではありません。また、それらのものを当然すべての参加者が希望しているわけではないということも承知しています。もし、それを望まない生徒が、「ホームステイプログラム」に参加した場合は、先述しましたように、参加者にとっては苦痛以外の何物でもないし、主催者にとっては好ましくない参加者という、両者にとって不幸な状況が現出することになり、これほど無意味なことはないでしょう。

そして、午前中の活動の中に組まれる「英語の授業」にしても、現地受入れ側が単純に提供するものは、名ばかりであることが余りにも多すぎるということを、特に日本の主催者は熟知しておくべきでしょう。その背景には、日本のプログラム主催者は、どのような授業が現場で提供されているかさえも知らないという可笑しな現実があります。現場は現場任せということでは、「英語の授業」の内容が、安易に流れるのは必定です。主催者が現地の授業の内容や教科書にも介入し、さらには現地の先生が参加者に出す宿題ひとつにも、注文をつけるようでなければ、プログラムの価値はそれだけでも大変な損失です。すなわち、通常、英語の授業を担当する現地の先生は、日本の小学生、中学生、高校生、大学生の英語力がどの程度であるかを知りません。また、日本の中学一年生が、学校でどのような内容の英語の授業を受けているのかも知りません。ですから、不要な内容を授業で行ったり、アメリカ人の子ども達には極めて簡単であっても、日本人の中学生には高度であったり、もしくはその逆のことも往々にして起こります。これを修正できるのは、日本のホームステイ主催者以外はできないのです。そういう意味では、日本の主催者が現場で直接、参加者に指導や助言を行なわないことは、致命的な欠陥として、今後、益々、参加者から指摘されていくだろうと思います。もちろん、グループを引率される指導者に、これらのものを依頼することもできるでしょうが、引率指導者は学校の先生であることが多く、ホームステイや異文化理解や相互理解の学習のプロではないということを考えれば、かなりの無理があると思われます。

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