ホームステイと留学のMNCC

2017年鹿児島県立加治木高校 海外研修プログラムの活動報告です。


HOME > 加治木高校海外研修プログラム活動報告

海外研修

Photo Album  写真アルバム

●2017年活動報告

     ※日付下の【動画】をクリックすると、動画をダウンロードしてご覧になれます。

帰国日動画@

  午前7時半、通いなれたスタディセンターに、スーツケースを持った研修生たちが、続々と集まってきます。出勤前のホストファミリーも集まってくださり、バスに荷物を載せる研修生たちのサポートをしてくれました。昨晩のパーティーが、記憶に残るとても素晴らしい経験になったと、声をかけてくださいました。海外からの留学生を受け入れることが初めてだったホストファミリーにとっても、「楽しそう」「やってみたい」という気持ちがあったとはいえ、「文化も言語も異なる未成年を受け入れて、ちゃんと面倒をみれるのか」「意思疎通が出来るのか」といった不安があったことは、間違いありません。「このプログラムに関わることができて良かった」「素晴らしい子どもたちだった」と言っていただけたのは、ほかでもない、研修生の努力の賜物だと思います。涙をこらえ、研修生みんなを強く抱きしめてくれました。バスが見えなくなるまで、手を振って見送ってくれます。しばらく車内でも、鼻をすする音が聞こえていました。わずか一週間弱のあいだに、かけがえのない、強い絆を結ぶことが出来たのだと思います。
 

サンフランシスコ空港までの道路は順調に流れ、一時間も経たないうちに、国際線ターミナルに到着しました。バスの中では、帰国後の報告会に向けて、研修生同士で、どのような内容で報告をするのかを、自主的に話し合っていました。
 スタディセンターと空港のちょうど中間あたりにホームステイをしていた研修生二人は、ホストマザーが直接空港まで見送ってくださいました。10名が合流し、チェックインの手続きに進みます。その前に、お土産や、ホストファミリーからいただいたプレゼントを詰め込んで、若干重量オーバーをしていたスーツケースは、荷物の入れ替えをして微調整をします。このグループの素晴らしいところのひとつで、他の研修生の荷物を持ってあげたり、声をかけあったりと、当たり前のように助け合う様子が、あらゆる場面で見られます。
 

研修生の到着前から、ホストファミリーの決定や学校との調整などに奔走し、活動中は自ら車を運転して研修生の送迎を行なってくださり、さらにはパーティーの段取りなど、現地コーディネーターとして、プログラムのために尽力してくださった、Suzanne先生、Jim先生とも、ここでお別れです。Suzanne先生から、「日本へ帰ったら、ご両親に、あなたたちの育て方は正しかったと、伝えてほしい。本当に素晴らしい子どもたちで、最高のグループだった。」という言葉が贈られました。二人の前にそれぞれ列を作って、全員がぎゅっとハグを交わし、さよならを告げました。
 

手荷物検査場を通り、搭乗ゲートに向かいます。日本を出発するときには、パスポートにスタンプを押してもらった出国審査ですが、ここアメリカを出るときには、特に何の手続きもありません。「去るもの追わず、なんですかね」という、研修生の発想が面白いなと感じました。時間には十分余裕があったので、一時間ほどの自由時間を設けました。集合場所に戻ってくるほとんどの研修生の手には、「お〜○、お茶」のペットボトルが。3ドルほどしたそうですが、みんなやはり、日本の味が恋しいようです。成田空港までの飛行時間は、約9時間45分。機内では、感想文を書いたり、春休みの宿題をしたりと、日本の高校生生活復帰に向けて、徐々に感覚を取り戻していきます。
 

12日ぶりに吸う日本の空気は、懐かしいような、新鮮なような、不思議な感覚です。周りが日本語で話していることにも、少し違和感を感じます。入国審査場は、多くの訪日観光客で溢れていましたが、日本国旅券保有者の列はスムーズに流れます。スーツケースを受け取り、税関を通り、出口へと向かいます。空港内のコンビニエンスストアで、遅めの昼食を買い込み、リムジンバスで、今度は羽田空港へ向かいます。道中も、見慣れていたはずの、左側通行や日本語で書かれている看板に、「何だか変な感じがする」という声があがっていました。
 

羽田空港で搭乗手続きを済ませ、搭乗フロアに入ります。バスの中では、軽食しか口にしていなかったので、フロア内にあるフードコートで、食事をとることにしました。おそばや海鮮丼など、厳選して注文したり、お弁当売り場でじっくり吟味して選び、ひさしぶりの“純”日本食にありつくことができました。
 

時間にはゆとりがあったので、自由時間をつくり、お土産を買ったり、私の携帯電話で、これまでに更新していた活動報告を見たりして過ごしました。ホームページにあげられている写真を、初めて見る研修生たちは、「もうアメリカでの生活が懐かしく思える」と、日本とアメリカという二つの国に身をおいて、過ごした時間や経験、吸い込む空気のギャップを、実感しているようでした。このギャップをどう消化するのかは、研修生のこれからの姿勢によるものと思います。
 

午後6時55分発の鹿児島便は、搭乗口からバスで、飛行機まで移動することになっていました。階段を上って機体に乗り込む研修生の姿は、一国の要員が、凱旋する場面であるかのようです。
 鹿児島空港に到着すると、原口校長、宮田教頭、そして研修生の家族の皆さんが、あたたかく、10名の帰りを迎えてくださいました。生徒代表として、マコに挨拶をお願いしました。10名全員の気持ちを、丁寧にまとめ、集まってくださった皆さん全員に届く声で、代弁してくれました。そして、無事に、第一回加治木高校海外短期研修の研修期間が終了しました。
 

明日の始業式やテスト、宿題など、加治木高校生としての生活が、また新たにスタートします。通常、春のホームステイで帰国をするこの時期は、すでに桜は散ってしまっているのですが、今年はまるで、研修生の帰りを待っていたといわんばかりのタイミングでの開花宣言に、驚きを隠せません。本当にこのグループは、強い運を持っている気がします。(ちなみに、期間中快晴が続いていたMenlo Parkは、今週木曜日から雨の予報となっていました。)
 

あっという間だった12日間。研修生全員が、この短い期間に、たくましく成長したということは、引率者として胸を張って、皆さんに報告できることです。研修生には、家族や友人、関係者の皆さんなど、ひとりでも多くの方々に、たくさんのお土産話を聞かせ、研修の成果をみせて欲しいと願います。

 末筆ながら、加治木高校の歴史に残る、この大きな記念事業に、OB兼引率者という立場で携わらせていただけたことに、心から感謝いたします。後輩たちの活躍する姿は、とても頼もしく、誇らしい限りでした。彼らの学びが還元され、全校生徒の皆さんや、これから入学してくる未来の後輩たちにも、大きな成果をもたらすことを祈念し、活動報告の結びといたします。12日間の研修生の様子を、温かく見守っていただき、本当にありがとうございました。

4月3日(月)動画@

動画A

動画B

 

   今日の午前中は、Stanford Shopping Centerでのショッピングに変更となりました。平日はほとんど買い物を出来る時間がなく、週末も、ホストファミリーとハイキングへ行ったり、ホストファミリーの通う学校でのイベントに参加したりと、アクティブに行動していた研修生たちは、サンフランシスコでの終日研修以降、なかなかお金を使うことが少なかったようで、十分に残っているお小遣いで、家族や友人へのお土産を買うための時間となりました。とはいえ、研修の一環であることを心に留め、アメリカでしか売っていないような品物や、日本との値段の違いなどを発見し、すべてカメラに収めることを任務として、自由時間を過ごしました。
 

お昼の時間に全員集合し、ショッピングセンター内のレストランで、Jim先生がピザをご馳走してくださいました。アメリカのレストランで注文するときには、メニューに写真があまり載っておらず、材料が羅列しているだけの料理名を、読み解いていかなくてはなりません。“オススメ”印のついている品物を厳選して、頼みたいメニューごとにテーブルに分かれ、昼食となりました。「思っていたのと違う…」という感想ももれつつ、店員さんに飲み物のお代わりを頼んだり、トイレの場所を尋ねたりと、自ら英語で話しかけることにはだいぶ抵抗がなくなっている様子をみることができ、とても頼もしく感じました。
 

昼食が終わると、スタディセンター前の公園に移動し、今夜行なわれるさよならパーティーの準備に取り掛かります。Suzanne先生から、ホワイトボードに図示して、会場設営と式の流れについて説明があります。その後、会場への掲示物や、ホストファミリーへのThank youカードを、3時間程かけて、準備しました。午後4時半に、一旦ホストファミリーが迎えに来てくれ、午後6時半に、パーティー会場へ再集合となります。
 

浴衣や袴に着替えて、ホストファミリーと一緒に研修生たちが会場に集まってくると、一気に会場の雰囲気が華やぎます。公園で、風の強い中、一生懸命準備した、研修生お手製のランチョンマットが、綺麗に並べられたテーブルに、ホストファミリーをご案内します。ランチョンマットには、ホストファミリーのそれぞれの名前が、創意工夫溢れる当て字で書かれています。パーティーには、研修生のホストファミリーだけでなく、永吉首席領事のご家族や、Mountain View高校のMr. Blair副校長先生も、お見えになりました。まずは、緑茶でおもてなしです。
 

Jim先生から、パーティーにお越しくださった方々への感謝のスピーチがあり、まずは会食の時間です。Suzanne先生とJim先生が、この日のために見つけてくれた日本食レストランの特製弁当を、お客様ひとりひとりにお配りします。お味噌汁に、てんぷら、照り焼きチキン、カリフォルニアロールと、日本のお弁当に比べてかなりボリュームのある内容でしたが、研修生はもちろん、ホストファミリーのみなさんも、お箸の使い方に四苦八苦しながら、美味しそうに召し上がっていました。一通り食事が済んだら、いよいよパフォーマンスの時間です。
 

研修生全員が、観客の前に着席し、即席のステージを設けます。司会役の二人の、“Thank you very much for coming to our Sayonara party!!” と、元気な声でスタートしました。Mountain View高校で鍛えられた研修生たちのプレゼンテーションは、かなり上達しており、手元のメモを見ずとも堂々と、パフォーマンスをしてくれました。このような出し物を見るのが初めてだというホストファミリーも多く、席から身を乗り出して、とても集中して観てくださっていました。自分がホストしている研修生の出番になると、ホストファミリーは立ち上がってカメラを構え、まるで本当のわが子を見るかのような眼差しで、嬉しそうに見守っています。一連のパフォーマンスを終え、最後の出し物は、永吉さんを迎えての、校歌斉唱です。手拍子でリズムを取り、大きな声で立派に歌い上げることが出来ました。恥ずかしがることなく、堂々と演技をしてくれる研修生全員を、本当に誇らしく思います。
 

研修生の出番を締めくくってくれたのは、コウショウとアスカのスピーチです。Suzanne先生とJim先生への感謝と、ホストファミリーへの感謝の気持ちを、それぞれ伝えると、あたたかい歓声と拍手が、研修生全員に贈られました。
 

そして、今度はSuzanne先生とJim先生から、研修生へ修了証書と、ホストファミリーへ感謝状が手渡されました。ホストファミリーの皆さんも、とても誇らしげに研修生を迎えてくださいました。
 

いよいよパーティーの最後、全員でキャンドルを灯し、「Auld Lang Syne(蛍の光)」を、全員で歌います。その前に、永吉さんより、研修生と加治木高校、そして龍門会を代表して、ホストファミリーとSuzanne先生、Jim先生へ、感謝の言葉が述べられました。今回の研修を通して、この10名が様々なことを学び、経験できたことは、ホストファミリーのおかげであること。研修生がこの研修から得たものは、個人だけでなく、学校にとっても、大変意義のあるものであり、ひいては日米友好の架け橋になるということ。そして、将来この研修生たちが、ビジネスマンとして、もしくは留学生として、さらには外交官として、ここに帰ってくるかもしれませんという言葉に、ホストファミリーも大きくうなずいていました。偉大な先輩の言葉に、この研修が、実際に対面する人々だけでなく、本当に多くの方々に見守っていただいていたのだということに、改めて気づかされました。「蛍の光」のメロディーは、多くの日本人にとって何か終わってしまうような、悲しい旋律かもしれませんが、ここアメリカでは、大晦日や披露宴、誕生日などに、“旧友との再会”を喜ぶ歌として、歌われています。ホストファミリーとの再会を誓う研修生への“はなむけの歌”として、ここMenlo Parkで出会った皆さんが、「また戻っておいで」と言ってくれているようで、とても温かい気持ちになります。
 

とうとう、到着したときには長いように思えた11日間が、終わろうとしています。会場の片付けを終え、研修生が帰途についたのは、午後9時を過ぎたころでした。明日の集合時間は、午前7時半です。もうすでに名残惜しい気持ちでいっぱいでしょうが、たくさんの思い出をスーツケースに詰め込んで、家族や友人、先生方の待つ日本に帰りたいと思います。

3月31日(金)動画@

動画A

 

  研修生が滞在しているMenlo Parkの周囲一帯に、アップルやフェイスブック、ヤフー、アドビシステムズなどの企業が社屋を構えており、ホストファミリーの中には、それらの企業に勤める方も何人かいらっしゃいます。今日のシリコンバレーツアーでは、フェイスブック、グーグル、サンノゼにあるテックミュージアム、そしてヒューレット・パッカードガレージを回ります。
 まずは、スタディーセンターから車で15分くらいの場所、同じMenlo Park内にある、フェイスブック本社へ向かいます。建物内は完全非公開とのことで、「いいね」のマークがのった看板の前で写真撮影です。まるでテーマパークのように広大な敷地には、プライベートセキュリティの車が巡回しており、駐車場から看板までの間を誘導してくれました。その数メートルの移動距離の間も、カメラ撮影は禁止という厳重さでした。次々と駐車場に大型バスが入ってきており、観光客なのかと尋ねると、それらにはすべて従業員が乗っているのだと教えてくれました。
 

次に、学校体験で訪れた、Moutain Viewへ向かいます。ここにあるGoogle社の敷地内には、従業員向けの食堂や社員寮はもとより、ショッピングモールなどもすべて揃っていて、ひとつの小さな町を形成しています。生徒たちが降りた駐車場には、赤・黄・緑・青のグーグルカラーにペイントされた自転車が何台も停まっていました。これは、敷地内を移動するために、だれでも自由に使っても良い自転車だそうです。高速道路をまたいで広がる敷地のため、従業員が移動するための地下道も建設されているということでした。
 

ある研修生のホストブラザーが、Googleに勤めており、通常はセルフで見学をするビジターセンターの中を、説明付きで案内してくれます。受付で、一人ひとり名前が印刷された入館証を受け取り、センターの中に入ります。館内では、Googleが立ち上げられた1996年からの歴史や、実際に従業員が働いているオフィスの展示、手作り感溢れる初代データサーバーなどを見学しました。わずか20年の間に急成長した企業の、経営力と、社員の創造力を、垣間見ることができました。
 

オフィスの展示エリアでは、Google社の自由でフレンドリーな社風が感じられました。一般的にアメリカのオフィスは、個人の机の間に仕切りがあり、半個室のような空間を作っているのですが、ここでは仕切りを取り、より従業員同士がオープンに話せる環境を作り出しているそうです。多くの日本の会社も、見た目は同じですが、こちらのオフィスには、遊び心があるように感じられます。壁には自分の好きな雑誌の切り抜きが貼られていたり、新入社員の時には変わった帽子を被り、リラックスした環境を演出しているということでした。福利厚生についても、社内の食堂は無料で提供され、サークルやカルチャー教室のようなものがあったり、マッサージやエステも受けられるというお話でした。「働きたい企業ナンバーワン」に選ばれるのも、当然かもしれません。ですが、業績が優秀な人こそどんどん辞めていってしまう現実もあるそうです。終身雇用が当たり前の日本とは異なり、シリコンバレーで働く人たちは、「自らビジネスを生み出す」という考えが、常に念頭にあるようです。研修生らは、彼の話を聞きながら、写真を撮ったり、うなずいたりしていましたが、日本とアメリカの働き方・生き方の違いを、それぞれどのように受け止めたのでしょうか。
 

一通りの説明を終え、今度は外にあるアンドロイドのモニュメントの前で、写真を撮りました。グーグルのスマートフォン向けOSであるアンドロイドは、バージョンごとの名称が、ドーナツやカップケーキなど(Windowsで言えば、VistaやXP、数字)であることから、それらをモチーフとした、可愛らしいモニュメントがたくさんありました。また、グーグルマップの作成時に実際に使用されていた、360度撮影できるカメラを搭載した車も見せてもらいました。車内の装備には、建築資材が使われています。まだ、道具が揃わない段階から、プロジェクトが実行されたということから、シリコンバレーでのビジネスが、スピード感を重視していることが、よくわかりました。昨日、加藤領事から教えていただいた、「Fail fast, fail often」の言葉が思い出されます。
 

案内をしてくれたホストブラザーと別れ、研修生はグーグルショップへ。グーグル公式の商品を取り扱う店舗は、世界でここだけということで、興奮気味に店内を見て回りました。普段、研修生たちがよく使っているであろう、YouTubeのステッカーなども売られていました。
 

次は、Mountain Viewの町から、車で南に30分ほど走ったところにある、サンノゼ(San Jose)を目指します。道中、高速道路から、アップル社やNASAの社屋を見ることが出来ました。
 

サンノゼでは、The Tech Museumという、科学技術博物館で、各々展示を見学・体験します。Suzanne先生とJim先生からチケットが配られ、40分ほどの自由見学となりました。ただただ見て回るのではなく、展示内容の中でわからない単語や、発見したことなどをすべてメモにまとめておくよう伝え、解散しました。特に理系組は、待ってましたとばかり展示フロアへ上がっていきました。この日が、現地の学校が休日だったようで、たくさんの生徒たちでにぎわっていました。お昼ご飯のために一旦集合し、近くの公園や博物館内のカフェテリアで、昼食をとりました。
 

昼食のあとは、館内に併設されている、IMAXシアターで、約45分の資料映画「Dream Big」を鑑賞しました。エンジニア(技術者)についてのストーリーで、英語も比較的分かりやすい表現が多く、研修生もしっかりと理解できていたようでした。IMAXシアターは、まるでプラネタリウムのように、スクリーンが頭上に広がっており、ダイナミックな映像と音響を楽しむことが出来ました。鑑賞後は、午前中の40分では回りきれなかった地階の展示物を見るため、もう30分ほど自由時間としました。
 

終日研修の最後は、ヒューレット・パッカード社が誕生したガレージを見学します。シリコンバレーの発祥地であるこの地は、住宅地のど真ん中にあり、カリフォルニア州の有形文化財であるという案内板がなければ、全く気がつかなそうな、本当にごく一般的な車庫でした。ヒューレット・パッカードという社名は、研修生たちにはあまり馴染みがないようでした、彼らがスタンフォード大学在学中に、600ドルにも満たない資金で、この小さなガレージからはじめた事業が、いまや世界的な産業となっていることは、とても夢のある、将来のビジョンを刺激する話だったに違いありません。
 

午後4時、スタディーセンターへ戻り、ホストファミリーの迎えを待ちます。明日明後日の週末が、ホストファミリーとゆっくり過ごすことの出来る最後の時間です。こちらでの生活にも次第に慣れ、英語での受け答えも瞬時に出来るようになってきましたが、少し気持ちが緩みがちな時期でもあります。研修の目的と初心を再確認して、日本に帰ってから後悔することがないよう、この週末を過ごしてほしいと伝えて、研修生たちを見送りました。

3月30日(木)動画@

動画A

 

 研修生たちが到着する前の一週間ほど、この地域は土砂降りの雨が続いていたそうですが、まるで研修生たちが太陽を運んできたと言わんばかりに、快晴の日が続いています。朝は、ジャケットが必要なくらいに冷え込むMenlo Parkですが、真っ青な空が広がり、日差しの強い日中は、20℃を超える一日となりました。朝と昼の気温差が原因か、少し鼻声の研修生もいましたが、今朝も10名全員、元気に集合してくれました。
 

スタディーセンターを出発し、まずはゴールデンゲートブリッジに向かいます。通勤時間に重なると、ひどい渋滞にはまってしまう区間ですが、少し時間がずれていたことと、道に詳しいドライバーさんのおかげで、一時間もかからないうちに、目的地に到着しました。
 ゴールデンゲートブリッジは、サンフランシスコを象徴する建造物のひとつです。海外ドラマ「フルハウス」のオープニングシーンにも、登場しています。「霧の街」とも呼ばれるサンフランシスコで、青空にくっきりと赤い吊橋が向こう岸まで見られたことは、研修生の運の強さを象徴してくれているようです。また、橋から少し東に目線を移すと、1960年代まで刑務所として使われていた、アルカトラズ島も見えます。Suzanne先生、Jim先生と一緒に、集合写真を撮影しました。
 アメリカでも最大規模のチャイナタウンがあるサンフランシスコには、中国語で書かれた看板が多くみられます。また、日本語の看板もちらほら。他にも、スペイン語やフランス語、ギリシア語や韓国語など、看板を見ているだけで、この街の多様性を推測することが出来ます。「霧の街」と、もうひとつ、サンフランシスコがもつ別称に、「坂の町」という言葉があります。研修生を乗せた車は、急な坂道を登り、前の車が姿を消したかと思うと、今度は急な下り坂に突入。まるでジェットコースターに乗っているようです。
 

車を降り、周りを見わたすと、なんと「ユニクロ」の看板を発見。日本企業が進出しているというだけで、少し親近感が湧きます。ケーブルカー乗り場に到着すると、すでに長い列が出来ていました。19世紀後半から、この街を走るケーブルカーに乗り、起伏に富んだサンフランシスコの街並みを見学します。車窓からは、商業の中心地であるユニオンスクエアや、「Painted Ladies」と呼ばれる、色とりどりのビクトリア朝の住宅を望むことができました。
 「Fisherman's Wharf」の手前が車庫となっており、降りて少し歩くと、次第に海の匂いが漂ってきて、大きなカニが描かれた有名な看板が見えてきました。中学生のときに使っていた英語の教科書に、サンフランシスコの説明コーナーがあったそうで、研修生らは、この「フィッシャーマンズワーフ」と「クラムチャウダー」を楽しみにしていたようです。店頭に魚介類が山積みにされた屋台からは、とても良い香りが漂ってきます。ちょうどランチタイムに差し掛かっており、お腹を空かせた研修生たちの食欲をそそります。研修生たちの希望を聞き、ここからもう少し先にある「Pier39」の方で、ランチタイムと自由時間を一緒にとることにしました。

 「Pier39」もまた、世界的な観光地で、平日でも多くの人々でにぎわっています。「BOUDIN」という、サワードウ(酸っぱいパン)のボウルに入ったクラムチャウダーで有名なベーカリーで、みんな揃って念願のクラムチャウダーを注文します。初めてのサワードウには、首をかしげていましたが…。よい記念になったということにしましょう。集合場所と集合時間を確認して、自由時間を1時間ほど設けました。
 

集合時間ぴったりに全員集まり、どんな買い物をしたのか聞いてみると、日本の家族や友人だけでなく、ホストファミリーにもお土産を買ったという子が多く、思いやりの気持ちに感心しました。そして次の目的地、在サンフランシスコ総領事館へ向かいます。
 

ビジネス街の中心を走るBattery Street沿いに立つビルの21階に、総領事館のオフィスが入っています、ビルの前で車を降りると、秘書のアイリーンさんが出迎えてくださいました。エレベーターに乗り、一気に21階まで上ります。オフィスの入口には、金属探知機があり、セキュリティの厳重さを感じさせます。いくつかの扉を通って、ソファが置かれた待合室に案内されました。少し緊張しながら待っていると、アイリーンさんが呼びに来てくださり、また別室に案内されました。
 

案内された部屋は、窓いっぱいに広がるサンフランシスコ湾の眺めが大変美しい会議室で、大きな円卓が配置されていました。着席して待っていると、間もなく永吉昭一首席領事と、加藤彰浩領事が入ってこられました。歓迎のご挨拶をいただき、永吉さんより、領事館での仕事内容や、サンフランシスコ総領事館の成り立ち、日本文化の紹介活動、姉妹都市活動などについて、お話を伺いました。このエリアでは、IT企業が多いことから、日本企業からの研修や視察も多く、その対応に当たっているそうです。また、2015年には安倍首相が訪問され、スタンフォード大学での講演や、電気自動車業界のトップであるテスラ社視察やFacebook視察などを、実施されたとのことでした。
 次に、加藤さんより、シリコンバレーについて、パワーポイントを使った説明を受けました。シリコンバレーの成り立ちや、シリコンバレーの父といわれる偉大な技術者のお話を伺いました。また、アメリカでは既に浸透している、「Uber」や「Airbnb」といったシェアリング・エコノミーと呼ばれるビジネスや、「IoT (Internet of things)」というシステムのお話も、まだそれらの概念が浸透していない日本に暮らす研修生たちにとって、とても刺激となったのではないかと思います。ご説明の中で出てきた、「Fail fast, fail often」という言葉は、何事も慎重に進めがちな日本人にとって、肩の荷を降ろしてくれるような考え方かもしれません。
 

質疑応答では、「このエリアで一番大きい日本企業はどこか。」「年間いくつくらいのベンチャー企業が生まれるのか」などといった質問が挙がりました。
 

日本とアメリカの教育の違いについて伺うと、永吉さんのお子さんが通われている小学校のお話を例に、アメリカの学校の仕組みについて教えてくださいました。成績の良い生徒や学習意欲の高い生徒に対しては、「Accelerated Class(進度の速い授業)」や「飛び級」があるということ。また、近年日本でも導入されているという「アクティブラーニング」がアメリカでは一般的であり、あるテーマに対し、ひとつの答えを見つけるのではなく、生徒たちの意見を問うような授業であると、仰っていました。
 そのほかにも、シリコンバレーで起業するにはどうするのか、どのような人が起業家として成功しているのかなど、とても興味深いお話を伺うことが出来ました。また、永吉さんご自身が初めて海外に出たのは、23歳のときだったそうです。「高校生の年齢で海外に行ってみたかった」と仰っていましたが、同窓会の先輩方のおかげで、この研修が実施できていることに、改めて有難いことだと実感しました。
 

最後に、研修生を代表してトモヤに挨拶をしてもらい、記念写真を撮影して、お別れしました。お忙しい中このような貴重な時間をいただけたことを、本当にありがたく思います。御礼として、研修生たちの寄せ書きをお渡して、領事館を後にしました。
 明日は、シリコンバレーの企業見学。加藤さんから説明していただいたことを、実際自分の目でみる大きなチャンスです。さらなる学びが得られることでしょう。 

3月29日(水)動画@

動画A

動画B

動画C

 Mountain View高校訪問、第二日目。一昨日初めて来た場所のはずなのに、“バディ”という存在のおかげか、学校に到着すると、すでに懐かしさを感じます。一昨日と同じ教室に集まり、Mr. Blairからショートホームルームを受けます。今日は、3つのクラスを相手に、プレゼンテーション三昧の一日となりそうです。使わせていただくのは、日本語を教えるミワコ先生の教室。机や椅子などのセッティングもすべて自分たちで行い、始業のベルを待ちます。全体練習をする十分な時間はとれず、とりあえず、流れの確認をして、第一回目のプレゼンテーションを行ないました。。
 観客となる米国人生徒は、日本語のAP(Advanced Placement)という、日本語の学力が高い生徒たちが集められたクラスです。何人か、研修生のバディを務めてくれる生徒も席についています。緊張の面持ちで、10名が一列に並び、まずはグループプレゼンテーションから始めます。日本の教育制度について、授業科目・国語・習字について、英語の授業について、制服・朝補習・全校朝会について、加治木高校の時間割や昼食・校内清掃について、部活動について、文化祭について、体育祭について、一日遠行について、修学旅行について、全員が分担して、日本の高校生活を紹介しました。
 次に、個人のプレゼンテーションに移ります。トップバッターのリコは、書道について、楷書と行書の違いなどを紹介しました。次に、モモカは、自分の好きな四字熟語である「一期一会」の意味を説明します。コウショウは、加治木高校での生活をまとめました。アスカは持参した着物を使って、着付けを織り交ぜたプレゼンテーションを行ないました。そして、トモヤとシュンノスケによる相撲のデモンストレーションで締めくくりました。
 

最後に、アスカのトランペットとコウショウのトロンボーンに合わせて、校歌斉唱をしました。二人の演奏も、八人の歌声も、ぶっつけ本番とは思えないほど、上手に披露することが出来たと思います。
 

APクラスは、日本語を流暢に話せる生徒も多く、日本語で質問をしてくる生徒も多くいました。日系米国人であったり、以前日本に住んでいたことがあったり、日本の文化に興味津々であったりする彼らにとっても、日本の教育制度や高校生活について、生の声を聞くことが出来る、貴重な時間となったようです。バディとしてお世話になったことへの、Give&Takeが実現できました。
 次のプレゼンまで、20分ほどの休憩があったので、初回の反省を踏まえて、次はもっと大きな声で、笑顔で、聞き手に伝わるような話し方をしてみようと伝えました。「Thank you for coming!」の導入から、再度自分たちで流れの確認を行い、第二回目のプレゼンに入ります。二回目と三回目のプレゼンを聞きに来るのは、日本語1(初級)クラスの生徒たちです。
 

今度ははじめに、校歌斉唱をして勢いをつけ、グループプレゼンに入ります。グループプレゼンの内容は、前回と共通のものです。パワーポイントの係りを決めたり、スタンバイから退場までの導線を変更するなど、自主的な改善が功を奏し、かなりスムーズになってきました。発表の声も、教室全体に聞こえるようなボリュームで話すことができました。
 

先ほどは、ほとんど日本語で質疑応答をしていましたが、今回は相手の語学力に合わせ、研修生たちが英語を使い、受け答えします。「もし制服を着ていかなかったらどうなりますか?」「男子が女子の制服を、女子が男子の制服を着ていくことはできますか?」「くも合戦の由来はなんですか?」「英語のどこが苦手ですか?」など、発想豊かな質問があがっていました。10人で力を合わせ、知っている単語や表現を駆使して、受け答えしました。
 ミナコ先生のご提案で、みんなで輪になって、音楽に合わせた簡単なダンスをしました。フォークダンスのようにぐるぐる回り、そこに来ていた米国人生徒たちひとりひとりと触れあうことができました。
 

今回の個人プレゼンは、マリンによる空手の紹介と型の披露、マコによる神楽の紹介、カリンの日本食の紹介、リョウタロウの日本のお正月についての説明、そして再び、トモヤとシュンノスケによる相撲のデモンストレーションです。それぞれ、大きな拍手をもらうことができました。
 

最後のプレゼンの前に、ランチタイムです。ブザーが鳴ると、一斉に教室から生徒たちが流れ出てきます。研修生のバディたちが、自分の授業を終えて、研修生がいる教室まで迎えに来てくれました。研修生たちには、日本から持ってきた名刺やお菓子を、出来るだけ多くの米国人生徒たちに配るよう、伝えました。
 

いよいよ最後のブレゼン。もう3度目ということもあって、みんな落ち着いた様子で準備をし、発表を行ないました。個人プレゼンは、マリンの空手、コウショウの弓道、アスカの着物、マコの神楽、そして、トモヤとシュンノスケの相撲です。研修生同士、機転を利かせて助け合う様子が印象的でした。
 

前の2時間は、全体で質疑応答を行ないましたが、今回は、日本人2名と米国人5名のグループに分かれて、少人数で行なうこととしました。日本人研修生のみんなにも、用意してきた質問をどんどん聞いてみるよう、促しました。ノートにメモを取りながら、学校の話題や趣味の話、スポーツの話などをしていました。
 

あっという間に時間は過ぎ、終業のブザーが鳴ります。研修生が、ホームルームを行なった部屋へ戻ると、テーブルの上には、Mountain View高校のマスコットであるスパルタンズのイラストが入ったバッグと、リストバンドが置かれており、バディたちから研修生に手渡されました。研修生からも、感謝の手紙と新聞紙で折ったカブトをプレゼントしました。生徒代表として、トモヤに感謝の言葉を述べてもらいました。突然のお願いだったにも関わらず、自分たちを受け入れてくださったことへの感謝と、別れを惜しむ気持ちを、堂々と、率直な言葉で述べてくれました。
 最後にみんなで集合写真を撮影し、Mountain View高校をあとにしました。研修生たちが乗る車に対して、バディたちが最後まで手を振ってくれました。完全に英語だけで受ける授業や、プレゼンテーションの実施など、この学校で体験したことは、きっと研修生にとって、大きな自信になるのではないかと思います。バディと再会するときのためにも、もっと英語が上手くなっていたいというモチベーションを、帰国後もずっと維持できるように、ぜひともバディたちとの連絡を取り続けていきましょうね。
 

明日は、サンフランシスコ終日研修です。加治木高校の大先輩、永吉首席領事との面会も控えています。集合時間は、7時45分と少し早めですが、遅刻することのないよう、しっかりと睡眠をとり、万全の体調で明日を迎えましょう。
 

3月28日(火)動画@

動画A

  今日の活動は、午前中がスタンフォード大学見学、午後からはMenlo-Atherton高校訪問となりました。


 スタディーセンターから、車でわずか5分ほどのところに、スタンフォード大学のキャンパスが広がっています。スペイン南部の建築様式で設計されたキャンパス内の建物は、どれも赤土色で、道路に沿って何本も連なるやしの木との調和が、とても美しい景観を成しています。キャンパスの正面から車で入ると、The Ovalと呼ばれる広い芝生の絨毯の先に、Memorial Church(教会)が建つ、Main Quad(装飾された廊下で囲まれる広場)を望むことができます。駐車場に車を停め、そこからはSuzanne先生とJim先生が、研修生のためにツアーをしてくれることになりました。学部生によるキャンパスツアーも提供されているのですが、彼らの話す早い英語を必死で聞き取ろうとするよりも、この全米屈指の大学について、より理解を深めて欲しいと、Jim先生が自らガイドを務めてくださいました。隅々まで見ようと思えば、きっと一日かけても足りないくらいの広大なキャンパスであるため、要所を押さえて回りました。


 駐車場からすぐの広場には、何点もの彫刻が並んでいます。それらは、すべてフランスの彫刻家ロダンの作品だそうです。「何でこんなところに?」と一瞬不思議に思いましたが、大学内に美術館があり、「考える人」が展示されているということ。早速、スケールの大きさを感じさせられます。写真を撮り、次のポイントへ進みます。歩きながら話すJim先生の説明を、研修生たちは聞き取れる単語をメモに取りながら、ついて行きます。


 スタンフォード大学が、1880年代に大陸横断鉄道の経営で富を築いたリーランド・スタンフォードにより、一人息子であったリーランド・ジュニアの幼い死を追悼するため、創設された学校であること。東海岸にあるハーバード大やイェール大、プリンストン大、そして同じサンフランシスコ近郊にあるカリフォルニア大学バークレー校と並び、全米トップ5に入る名門校であること。年間の学費がおよそ45,000ドル(450万円!)かかること。多くの学生がキャンパス内の寮で生活をしており、その費用がさらに年間15,000ドル(150万円!!)であること。他の学校が「虎」や「ブルドッグ」など勇ましいマスコットを持っているのに対して、この学校のシンボルは「木」であること…など、様々なことを教えてくださいました。必要な部分は日本語でも説明を挟みましたが、Jim先生の話す単語を書き取ろうという、研修生の意欲が感じられました。


 Main Quadに入ると、真っ青な空に映える赤い瓦屋根と石壁、細かい装飾が施された建物に囲まれて、まるで地中海沿岸の国にいるかのような錯覚を起こします。広場の奥には、Memorial Churchの美しい壁画がそびえ立ちます。「中学校の美術の教科書に載っていました!」と気づく研修生がいました。続いて、図書館や学部ごとに並ぶ講義棟群を通り、ブックストアまで歩きました。春休み期間中ということもあり、実際の講義を見ることは出来ませんが、ベンチや芝生に座って、本を読んだり、ノートパソコンを開いたりしている学生の姿がありました。


 ブックストアでは、本だけでなく、大学名の入った文房具や衣類、パソコンなどの電子機器類も売られていました。地下には、講義に必要な中古本も売っています。中古本は、ボロボロになるまで読み込まれたものもあり、熱心な学生たちの息づかいを感じられるようでした。研修生たちは各々、大学名の入った帽子やTシャツを、記念として購入していました。


 そうするうちにお昼の時間となり、研修生のホストマザーでもある大学職員の方が、キャンパスの中でも美味しいと人気のカフェテリアに連れて行ってくださいました。これまで見た歴史を感じさせる建物とは一転、モダンな建物はまるで大学の食堂とは思えません。それぞれ好きなメニューを注文し、テーブルを囲みました。ここでのランチ代は、Jim先生が支払ってくださいました。みんなで「Thank you」と「いただきます」を言って、大きなピザやハンバーガーを食べました。


 食事を終え、少し時間があったので、ここで研修生たちにミッションを与えました。周りに座っている人たちに、「学生か、職員か。」「何を専攻しているのか。」「出身地はどこか。」など、インタビューをしてみようという任務です。最低3人に聞くこと。自分ひとりでインタビューすること。メモをとること。というルールを決めました。「Start!」という掛け声とともに駆け出す生徒、躊躇いがちに周りを見渡す生徒、反応は様々でしたが、想像していた以上に早い段階で、ずけずけと(いい意味で)、食事をしている人に「Can I sit?」と聞いて、会話を始める研修生たち。少し困るとこちらに視線を送ってきますが、私はカメラを盾に、極力口を挟まないようにしていました。私が驚いたのは、突然のインタビューにも関わらず、ほとんどの方が、研修生の質問に受け答えをしてくださったことです。迷惑そうな顔をしている人はほとんどおらず、むしろ懸命に、研修生らの英語を聞き取ろうと耳を近づけてくれます。制限時間の10分を超えてもなお、話し続けている子も。戻ってきた研修生の目はとても生き生きとしており、「4人聞けた!」「楽しかった!」と言ってくれました。インタビュー相手がどんな人だったか聞いてみると、細胞学を学んでいる中年女性や、PhD(博士号)を目指すカナダ人留学生、エグゼキュティブ・エデュケーション・オフィスで留学生のサポートをしている職員など、様々な立場の方と、話が出来たようです。さすが、加治木高校生の代表!!と褒めたくなる結果でした。


 午後の活動を行なうMenlo-Atherton高校も、大学から車でほんの5分程のところにあります。米国人高校生との交流活動は、Mountain View高校で実施することになったのですが、この学校でも、見学だけでもと、Leadership Classに所属する2名の生徒がついて、校内を案内してくれました。どちらかというと、Mountain View高校よりも都会的な雰囲気のように感じました。途中、ここの生徒である研修生のホストブラザーと出くわし、その仲間たちとひと盛り上がりする場面もありました。ガイドを務めてくれた女子生徒は、メイクもばっちりで、とても大人っぽく見えました。Mountain View高校でも米国人生徒たちの大人っぽさを感じていた研修生たちですが、自分たちが最高学年Senior(12年生)の立場であることに、何だか違和感を感じてしまいます。


 先ほどのインタビュー体験の成果もあってか、「何か質問はありますか?」という彼女たちの問いかけに、さっと手があがります。部活のことやクラス数について、通訳を介することなく、会話をすることができました。見学させていただいた御礼として、新聞紙で作ったカブトを渡し、お別れしました。
 スタディーセンターへ戻り、ホストファミリーが迎えに来るまでの間は、明日のMountain View高校訪問の際に披露するプレゼンテーションの練習を行ないました。Jim先生とSuzanne先生も協力してくれ、原稿の修正や発音の指導を受けました。日本から準備してきた成果を発揮する舞台です。20〜30名ほどの生徒がいる教室で、なんと3限分(90分×3コマ)を使って行なうとのこと。みんなすでに、緊張の表情を浮かべていましたが、自信をもって、堂々と発表をしてほしいと思います。

3月27日(月)動画@

動画A

動画B

 当初訪問を予定していたMenlo-Atherton高校の都合により、予定が一部変更となりました。学校体験第一日目の訪問先は、Menlo Parkから少し離れたMountain View市にあるMountain View高校です。Mountain View市は、かの有名なGoogle本社がある場所。Menlo Park同様、平均所得が高い住宅地の中にある、1,800名規模の大きな学校です。


 朝7時の集合にも関わらず、スタディセンターに集まった研修生たちは、日曜日にどんなことをしたのか、ホストファミリーの家がどのような感じだったのかを、興奮した様子で互いに報告しあっていました。フライトミュージアムに連れて行ってもらったり、忍者パーティー(!)に参加をしたり、ホストファミリーと一緒に食事を作ったり、生まれて初めてのメキシコ料理を堪能したり。それぞれに、楽しい週末を過ごせていたようです。数名鼻づまりを訴える研修生もいましたが、熱はないようだったので、様子をみることに。ここで、Suzanne先生から、今日の活動で一緒に行動をする米国人高校生バディの名前が、ひとりひとり伝えられました。対面したときに名前を覚えていられるよう、メモにスペルを書き写しました。


 車で30〜40分ほど移動し、Mountain View高校に到着しました。天気予報は曇りとなっていましたが、真っ青な空が広がる清々しい空気の中、アメリカ人高校生たちがちょうど登校してくるところでした。副校長先生のMr.Blairに案内され、加治木高校一行で使わせてもらえる部屋へ入りました。


 はじめに、Mr.Blairから、今日一日の流れの説明を受けました。バディとなる米国人生徒たちとの対面に、そわそわしていましたが、まだ少しお預け。まずは、日本語クラスをとっている生徒たちによる、歓迎の舞「恋するフォーチュンクッキー」が披露されました。日本での中学3年から高校3年までの計4学年が通う学校ですが、選択クラスは異学年混成です。見た目からはまったく年齢が想像できない米国人生徒たちですが、なんだかみんな大人びて見えます。日本語を教える先生は日本人の方で、加治木高校の一団を大変歓迎してくださいました。この中に、研修生たちのバディがいるそうですが、ゲームをしながら相手探しをすることになりました。手渡されたのはディズニーキャラクターのイラスト。それぞれのキャラクターの"バディ(相方)"を探してみようというアイディアです。ここで初めて、「何を持っているの?」「お名前は?」といった簡単な英会話を使い、米国人生徒たちとのコミュニケーションがスタートします。全員がバディを見つけると、元の部屋へ移動し、ブレックファストタイム。学校が用意してくれたクッキーやクロワッサン、ベーグルなどを食べながら、バディたちと自己紹介をします。


 次に、Mr.Blairからプリントが配られ、名前ビンゴをすることになりました。5×5マスの中には、24個の質問が書かれています。その質問に当てはまる人を探して、名前を埋めていくというゲームです。簡単な英文ではありましたが、「March Madness」や「Game of Thrones」「Twilight」など、アメリカ人は知っていて当たり前の固有名詞に手こずりながら、なんとかビンゴを目指します。自分のバディだけでなく、多くの米国人生徒たちと会話をすることができた時間となりました。


 そのあとは、Ambassador Studentsと呼ばれる、新入生や訪問者の案内をする係りの生徒たちが、学校内を案内してくれました。校内の建物はすべて平屋で、中庭には花や木が植えられているとても美しい敷地です。教室は6つの棟に分かれており、中心には体育館やプール、先生方のオフィスやカウンセラールーム、図書館などの施設が備わっていました。とにかく広い。建物の外観もあまり見分けがつかないので、ちょっと気を抜くと迷い込んでしまいそうです。3月だというのに屋外プールで水泳の授業が行なわれていました。なんと、温水プールとなっているそうです。また、生徒専用の駐車場には、所狭しと車が並んでいました。16歳から運転免許を取れるアメリカでは、高校生が車で通学することも全く普通のことです。Ambassador Studentsによる説明は、結構な早口で、単語を拾うのがやっとといった様子でした。


 そしていよいよ、授業に向かうことに。「ブー」という簡単なブザー音で、始業の合図が流れます。研修生たちは散り散りに、バディと一緒に教室へ入っていきました。巡回してみると、「英語」「科学」「歴史(アメリカ史)」「保健」といった、日本でもなじみのある教科から、「アカペラ」「オーケストラ」「写真」「ヒップホップダンス」など、「部活?」と思えるものまであり、それらを自ら選んで時間割を立てる米国人生徒たちのことを羨ましく感じると同時に、果たして日本の高校生は、自らの意思でこれだけの選択肢の中から自分だけの時間割を立てることが出来るだろうかとも感じました。また、日本とは異なり、教師が自分の割り当てられた教室を、自分の好きなように掲示物などを作り、生徒たちが教室間を移動するというのがアメリカ式です。見て回るのだけでも楽しめそうな、個性的な教室がたくさんありました。Mr.Blair曰く、Mountain view高校の学区は、大企業の恩恵を受け、予算が潤沢にあり、ときには教師からのプレゼンテーションによって予算編成を行なっているとのこと。最近採用されたのは、Google社内で使われているような、デザイン家具の導入だそうです。机の側面やしきりにホワイトボードが配置されていたり、椅子の形状に特徴があったり、思い浮かんだアイディアがすぐに書き留められるよう、テーブルの天板が真っ白で大きな円形のメモ帳になっていたりと、シリコンバレーらしい提案だと感じました。教室内を観察するだけでも、様々な発見がある学校訪問。研修生たちは果たしてどのようなことを感じ、学んだのでしょうか。


 ランチタイムもバディと一緒に過ごします。学校中のどこでランチをとるのかは自由。芝生の上や階段、廊下、教室など、みんな思い思いの場所に座り込んで、サンドウィッチや生野菜(!)、ポテトチップスなどのアメリカンランチを食べていました。数時間ぶりに再会する日本人の姿に、安堵の表情を浮かべながら、それぞれどのような授業を受けたかを話していました。英語にも若干疲れ気味なのか、「日本語って楽!」という声も聞かれました。


 最後の授業が終わり、Mr.Blairから「水曜日にまた会いましょう」と見送ってもらい、Menlo Parkへ帰途につきました。途中、オーガニック食品のスーパーに入っているアイスクリームショップへ寄り、Suzanne先生とJim先生が、今日一日を何とか生き抜いた研修生たちに、アイスクリームをご馳走してくださいました。


 スタディセンターに着くと、ホストファミリーたちが迎えに来てくれていました。わずか3日しか一緒に過ごしていない家族ですが、自らホストマザーにハグする研修生もおり、ホストマザーもとても嬉しそうでした。


 提出してもらった「一日の記録」には、出発日の緊張やホストファミリーと対面したときの喜び、初めて行ったアメリカのスーパーでの衝撃など、多様なトピックで書いてくれていました。今日の学校での体験も、ぜひしっかりと書面に残し、在校生へ還元するための記録として、書き留めてほしいものです。  

3月25日(土)

  鹿児島県立加治木高校創立120周年を祝う記念事業である、海外短期研修がいよいよ出発の日を迎えました。早朝6時30分、この日のために準備を重ねてきた研修生10名が、鹿児島空港に集まりました。研修生の見送りには、ご家族の方だけでなく、校長をはじめ、8名もの先生方がお見えになり、生徒たちに激励の言葉をかけてくださいます。加治木高校生の代表として、多くの方々からご支援をいただき、研修生はその期待を背負って、アメリカへ旅立ちます。


 研修生を乗せた飛行機が羽田空港に到着すると、出発地・鹿児島の天気が嘘のような、晴天が広がっていました。サンフランシスコ空港まで同便で移動する他グループの生徒たちと共に、今度はリムジンバスに乗って、一路成田空港を目指します。春休み初日ということもあってか、羽田空港から都心へ向かう高速道路は渋滞気味でしたが、千葉県に入ると、順調に車が流れ、十分に余裕を持って成田空港に到着することができました。
 国際線のチェックインは、航空会社職員のサポートを受けながら、一人ずつ、機械を使って行ないました。手荷物のクレームタグも自動発券され、国内線では空港職員の方にやっていもらっていた作業を自ら行ないました。予想に反して、あまり空港内は混雑しておらず、その後もセキュリティゲート・出国審査を、スムーズに通過し、搭乗開始のおよそ3時間前には、搭乗口まで進むことが出来ました。搭乗口前で集合写真を撮影し、一旦自由時間を設けましたが、あいにくこのターミナルにはあまりお店が入っていなかったためか、みんな搭乗口付近のベンチに座り、待機していました。その間に、現地で行なうプレゼンテーションや、さよならパーティーについての打ち合わせを行ないました。


 ようやく搭乗時間を迎え、列に並んでいると、一人の外国人男性が研修生らに日本語で話しかけてこられました。研修生らが、サンフランシスコ近郊に滞在することを知ると、"Pier39”や“Fisherman’s Wharf”といったお勧めの観光地や、そこでの美味しいお店などを、英語と日本語を混ぜながら、教えてくれました。今回日本へは、大阪に留学をしている兄弟を訪ねてきたとのこと。さらに伺うと、日本のアニメやドラマが好きで、日本語はそれらのエンターテイメント作品を通して、独学で習得したということでした。自分が好きなものを知るための、「道具」として日本語を身に付けた彼の姿は、これからアメリカで、英語を「道具」として使い、現地の高校生やホストファミリーとコミュニケーションを図ろうとする研修生たちにとって、素晴らしい刺激になったのではないかと思います。
 約9時間のフライトは、途中大きく揺れることもありましたが、誰一人体調を崩すことなく、無事、サンフランシスコ空港に到着しました。米系の航空会社ということもあり、キャビンアテンダントは外国人。機内食や飲み物の注文も、英語で行ないます。この旅初めての英会話でしたが、研修生たちは物怖じすることなく、堂々と答えていました。到着後に待ち受けている入国審査では、一人ずつカウンターに呼ばれ、審査官からいくつか質問を受けます。指紋採取・顔写真撮影の手順を踏み、入国スタンプを押してもらいます。次の手荷物検査場では、男子を中心にスーツケースの受け取りを手際よく済ませてくれていました。


 税関を通り、出口へ進むと、今回の研修を“Teacher Coordinator(TC)”としてサポートしてくださるSuzanne先生が、研修生の皆さんを出迎えてくれました。ひとりひとり握手を交わし、生徒たちは自己紹介をします。バスが来るまでの間、短いオリエンテーションを行ないました。Suzanne先生より、今後のプログラムの流れについての説明がありました。到着したばかりで、まだ英語に耳が慣れていないのではと思いましたが、みんなSuzanne先生の言葉に正確なリアクションをとり、理解している様子をみせています。Suzanne先生も、「頼もしい生徒たちだ」と、嬉しそうです。ここで、研修生1名のホストファミリーが、今夜サンフランシスコ近くでパーティーの予定があるということで、直接空港まで迎えにきてくれました。少し緊張気味の彼女を、「Have a good weekend!」と言って見送ります。
 バスで、ステイ地であるMenlo Parkへ向かう途中、昼食のためにマクドナルドへ立ち寄りました。日本でも見慣れている店構えとはいえ、メニューはすべて英語。しかも、写真が少なく、目を凝らして単語を拾っていかなければなりません。メニュー表示価格が、税抜きであることも、日本とは異なる部分です。また、ドリンクの頼み方も、日本の店舗とは勝手が違います。“持ち帰り”という表現は、「テイクアウト」とは言いません。早速、日本にもあるマクドナルドで、日本との違いを多く発見しました。店員の英語の早さにも、驚きました。実践的な、「道具」としての英語を学ぶ環境に飛び込んだ実感が、いよいよ湧いてきたのではないでしょうか。


 どこまでも続くように見える広大な丘陵地を抜け、バスはハイウェイを降り、Menlo Parkの瀟洒な町並みの中へと入っていきます。サンフランシスコ市内で働く方々のベッドタウンであるMenlo Parkですが、Suzanne先生によると、一軒家の平均価格は約100万ドル(約1億1千万)とのこと。あまり大きな家でなくとも、そのくらいの価格だという理由は、サンフランシスコ近郊の交通事情にあります。一日に何時間も酷い渋滞につかまるよりは、これだけの金額を払ってでも、職場の近くに家を持ちたい人が多いことが、地価の高騰にも繋がっているようです。


 Menlo Churchにバスが到着すると、そこにはホストファミリーたちが待っていてくれました。生徒たちはバスを降り、一列に並んで、ひとりひとり自己紹介をします。それぞれのホストファミリーが、手を挙げて「あなたはうちの子よ」と笑顔で挨拶してくださいます。Suzanne先生から、ケーキが振舞われ、ホストファミリーと一緒に食べながら、会話をします。明日の日曜日、何かやりたいことはあるか。好きな食べ物は何か。アメリカで何をして楽しみたいか、、、など、ホストファミリーからの質問が次々に出てきます。はじめは緊張の色を見せていた研修生たちの表情も、次第に和らぎ、ホストファミリーたちは、その様子を嬉しそうに写真に収めていました。そして、日が傾いてきた夕方17時ごろ、研修生たちはホストファミリーの家へとそれぞれ帰っていきました。仕事のため、この場に来られなかったホストファミリーの元に滞在する研修生は、Suzanne先生が家まで送ってくれることになっています。


 鹿児島を出発してから、約27時間の旅。最終目的地であるホストファミリーの家まで、長い長い道のりでした。今夜はゆっくり休み、明後日の月曜日にまた元気な姿をみせてくれることを願います。週末の過ごし方を聞くのが、いまから楽しみです。

 

ホーム 会社案内 お問い合わせ サイトマップ 
MNCC 南日本カルチャーセンター 
Copyright © 2017 MinamiNihon Culture Center. All Rights Reserved. http://www.mncc.jp