研修生が滞在しているMenlo Parkの周囲一帯に、アップルやフェイスブック、ヤフー、アドビシステムズなどの企業が社屋を構えており、ホストファミリーの中には、それらの企業に勤める方も何人かいらっしゃいます。今日のシリコンバレーツアーでは、フェイスブック、グーグル、サンノゼにあるテックミュージアム、そしてヒューレット・パッカードガレージを回ります。
まずは、スタディーセンターから車で15分くらいの場所、同じMenlo Park内にある、フェイスブック本社へ向かいます。建物内は完全非公開とのことで、「いいね」のマークがのった看板の前で写真撮影です。まるでテーマパークのように広大な敷地には、プライベートセキュリティの車が巡回しており、駐車場から看板までの間を誘導してくれました。その数メートルの移動距離の間も、カメラ撮影は禁止という厳重さでした。次々と駐車場に大型バスが入ってきており、観光客なのかと尋ねると、それらにはすべて従業員が乗っているのだと教えてくれました。
次に、学校体験で訪れた、Moutain Viewへ向かいます。ここにあるGoogle社の敷地内には、従業員向けの食堂や社員寮はもとより、ショッピングモールなどもすべて揃っていて、ひとつの小さな町を形成しています。生徒たちが降りた駐車場には、赤・黄・緑・青のグーグルカラーにペイントされた自転車が何台も停まっていました。これは、敷地内を移動するために、だれでも自由に使っても良い自転車だそうです。高速道路をまたいで広がる敷地のため、従業員が移動するための地下道も建設されているということでした。
ある研修生のホストブラザーが、Googleに勤めており、通常はセルフで見学をするビジターセンターの中を、説明付きで案内してくれます。受付で、一人ひとり名前が印刷された入館証を受け取り、センターの中に入ります。館内では、Googleが立ち上げられた1996年からの歴史や、実際に従業員が働いているオフィスの展示、手作り感溢れる初代データサーバーなどを見学しました。わずか20年の間に急成長した企業の、経営力と、社員の創造力を、垣間見ることができました。
オフィスの展示エリアでは、Google社の自由でフレンドリーな社風が感じられました。一般的にアメリカのオフィスは、個人の机の間に仕切りがあり、半個室のような空間を作っているのですが、ここでは仕切りを取り、より従業員同士がオープンに話せる環境を作り出しているそうです。多くの日本の会社も、見た目は同じですが、こちらのオフィスには、遊び心があるように感じられます。壁には自分の好きな雑誌の切り抜きが貼られていたり、新入社員の時には変わった帽子を被り、リラックスした環境を演出しているということでした。福利厚生についても、社内の食堂は無料で提供され、サークルやカルチャー教室のようなものがあったり、マッサージやエステも受けられるというお話でした。「働きたい企業ナンバーワン」に選ばれるのも、当然かもしれません。ですが、業績が優秀な人こそどんどん辞めていってしまう現実もあるそうです。終身雇用が当たり前の日本とは異なり、シリコンバレーで働く人たちは、「自らビジネスを生み出す」という考えが、常に念頭にあるようです。研修生らは、彼の話を聞きながら、写真を撮ったり、うなずいたりしていましたが、日本とアメリカの働き方・生き方の違いを、それぞれどのように受け止めたのでしょうか。
一通りの説明を終え、今度は外にあるアンドロイドのモニュメントの前で、写真を撮りました。グーグルのスマートフォン向けOSであるアンドロイドは、バージョンごとの名称が、ドーナツやカップケーキなど(Windowsで言えば、VistaやXP、数字)であることから、それらをモチーフとした、可愛らしいモニュメントがたくさんありました。また、グーグルマップの作成時に実際に使用されていた、360度撮影できるカメラを搭載した車も見せてもらいました。車内の装備には、建築資材が使われています。まだ、道具が揃わない段階から、プロジェクトが実行されたということから、シリコンバレーでのビジネスが、スピード感を重視していることが、よくわかりました。昨日、加藤領事から教えていただいた、「Fail fast, fail often」の言葉が思い出されます。
案内をしてくれたホストブラザーと別れ、研修生はグーグルショップへ。グーグル公式の商品を取り扱う店舗は、世界でここだけということで、興奮気味に店内を見て回りました。普段、研修生たちがよく使っているであろう、YouTubeのステッカーなども売られていました。
次は、Mountain Viewの町から、車で南に30分ほど走ったところにある、サンノゼ(San Jose)を目指します。道中、高速道路から、アップル社やNASAの社屋を見ることが出来ました。
サンノゼでは、The Tech Museumという、科学技術博物館で、各々展示を見学・体験します。Suzanne先生とJim先生からチケットが配られ、40分ほどの自由見学となりました。ただただ見て回るのではなく、展示内容の中でわからない単語や、発見したことなどをすべてメモにまとめておくよう伝え、解散しました。特に理系組は、待ってましたとばかり展示フロアへ上がっていきました。この日が、現地の学校が休日だったようで、たくさんの生徒たちでにぎわっていました。お昼ご飯のために一旦集合し、近くの公園や博物館内のカフェテリアで、昼食をとりました。
昼食のあとは、館内に併設されている、IMAXシアターで、約45分の資料映画「Dream Big」を鑑賞しました。エンジニア(技術者)についてのストーリーで、英語も比較的分かりやすい表現が多く、研修生もしっかりと理解できていたようでした。IMAXシアターは、まるでプラネタリウムのように、スクリーンが頭上に広がっており、ダイナミックな映像と音響を楽しむことが出来ました。鑑賞後は、午前中の40分では回りきれなかった地階の展示物を見るため、もう30分ほど自由時間としました。
終日研修の最後は、ヒューレット・パッカード社が誕生したガレージを見学します。シリコンバレーの発祥地であるこの地は、住宅地のど真ん中にあり、カリフォルニア州の有形文化財であるという案内板がなければ、全く気がつかなそうな、本当にごく一般的な車庫でした。ヒューレット・パッカードという社名は、研修生たちにはあまり馴染みがないようでした、彼らがスタンフォード大学在学中に、600ドルにも満たない資金で、この小さなガレージからはじめた事業が、いまや世界的な産業となっていることは、とても夢のある、将来のビジョンを刺激する話だったに違いありません。
午後4時、スタディーセンターへ戻り、ホストファミリーの迎えを待ちます。明日明後日の週末が、ホストファミリーとゆっくり過ごすことの出来る最後の時間です。こちらでの生活にも次第に慣れ、英語での受け答えも瞬時に出来るようになってきましたが、少し気持ちが緩みがちな時期でもあります。研修の目的と初心を再確認して、日本に帰ってから後悔することがないよう、この週末を過ごしてほしいと伝えて、研修生たちを見送りました。
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