寒い風が吹く曇り空の中、生徒達がぞくぞくと集まってきた。今日は雨が予報されており、天気を心配していたが、曇りのまま朝を迎えた。あまりの寒さにコトネは凍えて唇がブルブル震えていたが、クラスに向かう時には治っていた。学校が始まるまでの間、朝からバスケットのコートに人だかりができていた。なんと、ソウリン、トモキ、モトキがアメリカ人生徒とバスケットをしていた。すごい寒い中、ワタルはコートの外で彼らの写真をとっている。気になったので聞いてみると、バスケはどうも苦手との事。コート上には、30人以上の生徒が集まって見ており、熱血した空気が伝わってきた。中には、半そで半ズボンのアメリカ人生徒達もおり、一瞬目を疑ってしまうほどだ。ここコーニングは寒い天気が続いている。九州と気温は変わらないはずなのだが、多分、朝は10度以下になると思う。始業ベルが8時過ぎに鳴り、生徒達は、昨日と同じアメリカ人生徒に連れられて各教室に入っていった。中には、昨日のアメリカ人生徒が今日休みをとっていた生徒もおり、他のアメリカ人生徒が、「僕が一日彼を案内していいですか?」と聞いてきた。積極的である。意思の疎通をはかれるのか?とか色々とアメリカ人生徒は不安にならないのだろうか。日本人なら恐れや不安が先に出てなかなか行動ができない人が多い傾向が見られると思う。改めて、アメリカ人の積極的な姿に考えさせられた。
ここビスタ中学校のクラスルームには、暖房冷房が完備されている。なので、授業中は寒さに震えるという事がない。1時間目、ユウコウとマユは同じクラスで数学の授業を受けていた。習った事がないところをやっているのか、ユウコウは苦戦していた。辞書を引っ張り出しながら隣のアメリカ人生徒に教えてもらおうとしている。隣にいたアメリカ人生徒は、ユウコウの2つ下みたいだ。マユは、今日の授業は、すでに日本で習ったとこみたいで、すらすらとアメリカ人生徒に負けずに問題を解いていく。数学が楽しいと言う彼女の気持ちが分かる気がした。生徒達の授業を観察していると、みんなが初日と大分変わり、見違えるほど積極的になっている。近くで彼らの成長を見られる事は、引率をする私にとって、非常にありがたい。リサとモトキも同じく別の数学のクラスを受けていた。リサが昨日「私はあなたをあいしています」と日本語を教えたと思われるアメリカ人生徒のバインダーに、油性ペンでその文字が書いてあった。ずっとそのバインダーをアメリカ人生徒が使ってくれたらと願う。リサも積極的に隣のアメリカ人生徒に数学を教えてもらっていた。彼らはリサの事を超気に入っているようだ。また、モトキのグループもモトキの事が大好きみたいだ。グループの子ども達は、モトキが数学の宿題をしてくるもので、天才扱いをしている。しかも、寿司の形をした物をあげたみたいで、グループの子が、私にトモキがこんなクールな物をくれたと自慢してきた。実は、モトキとリサのクラスで授業を受けている生徒達は中学校1年生だ。だが、とてもそうは見えない。アメリカでは男女はとても仲がいい。日本みたいな感じではない。男子でも、女子でも、性別に変わらずハグはするし、友達になる。
2時間目に入り、体育館に行くと、アユミ、トモキ、カオリ、モトキが走っていた。シャトルランみたいだ。最初は15人くらいでスタートし徐々に自分の限界を感じたらやめていくみたいだが、トモキは、最後の4人に残っていた。何回往復したのだろう。生徒達がアメリカ人生徒と対等に活躍してるのを見ると嬉しくなった。どこかのクラスで、アメリカ人生徒に聞かれた。「いつ、日本に帰るの?」「来週の火曜日が最後です」と答えると、大きな声で、「みんな、本当にいい人達だから、私達と一緒に学校にずっと来て欲しい!」と言われた。そう思ってくれるのは、引率者として非常に嬉しかった。ユウコとアカネも数学の授業を受けていた。クラスでのアカネの笑顔が最近目立つ。学校が面白いのだろう。アカネのグループの子がアカネの英和辞書を片手に一生懸命コミュニケーションを取っている。辞書は本当にコミュニケーションを取る良いツールだ。ユウコは黙々と問題を解いていく。その姿は、アメリカ人生徒に劣っていない。先日は、理科の授業で発表をしたみたいだ。異国の地で活躍する生徒の将来が非常に頼もしく感じた。生徒達を見てまだ5日という短期間だが、確実に成長し度胸がついているのがわかる。やはり、生徒達が明確な目標を持って、アメリカに来てる事が、生徒達が学ぶという姿勢を継続できているのだろう。目標を持つのは改めて大事だと気づいた。
午後からは、待ちに待ったイースターエッグハンティング活動だ。何人かの生徒が日記に非常に楽しみだと書いてあった。イースターというのは、キリストの復活を祝う行事で、日本ではそこまでポピュラーではないが、アメリカでは一大行事である。この季節は、街に行けば、厚さ1センチはありそうなウサギの顔のチョコレートをはじめ、プラスチックの卵にお菓子が入ったイースター限定のお菓子などが売りに出される。
スタディセンターについてすぐ、まずは生徒全員の個人写真をとった。最後のサヨナラパーティで使うのであろう。その後、4つのテーブルに5色の色を用意し、ゆで卵の殻に色をつける準備をした。アメリカ人の先生方が準備をしていたら、マユ、リサ、カオリとユウコをはじめ、みんなが自分から進んで準備の手伝いをした。アメリカで手伝いをするのは当たり前の事である。だが、やはりアメリカ以外の国ではそうではないとこもあるみたいだ。みんなで手伝いをすると先生方に相当喜ばれ、褒められた。「君たちのグループの生徒は本当に優秀だ。」嬉しい限りである。本当に生徒達は優秀だと心から思う。準備が終わり、ゆで卵の殻にみんな好きな色を塗り始めた。塗るというか、コップに入った色水に、卵をしばらく浸すのである。女子は器用な人が多かった。モモカや、ユウコの作品は沢山の生徒から「すげー!」の連発である。男子も負けてなかった。ダイスケが器用にゆで卵の殻に色をつけて素敵な作品を作っていた。卵がかわいたら、今度は先生方が裏の庭にそれを隠しに行った。
しばらく時間があったので、私から生徒達に連絡事項を伝え、気を緩めて事故や怪我、そして体調管理に気をつけるよう伝えた。また、日記の項目を必ず全て毎日記入するよう、もう一度、アメリカに来た目的を思い出しながら残り少ない時間を過ごすよう指導した。みんな素直な生徒である。引率者としていつも思うのは、素直な人ほど成長するのが早いという事である。この10日間の研修は、生徒全員にとって決して忘れることのできない強烈な体験になってほしいと願っている。
さあ、今からイースターハンティングである。一人6個の卵を見つけるよう言われ、一生懸命みんな探し回っていた。聞くと、先生方は合計120個以上の卵を隠していたみたいである。先生方も大変だっただろう。でも、生徒達は楽しそうに集めていた。集めた卵はホストファミリーにあげるかもしれない。アメリカではゆで卵に色を塗り、飾り付けした卵は後で殻を割って食べるみたいだ。初めてのイースターの体験はどうだったんだろう。生徒達は楽しそうに活動に参加していた。
帰る前に、サヨナラパーティでの出し物を皆に決めさせた。昨日から口をすっぱく決めるように言っているので、全員がすぐに何をするか教えてくれた。この週末で練習してほしい。来週の火曜日にサヨナラパーティをするが、ビスタ中学校の先生方、そして生徒の案内役のアメリカ人生徒とその親、そしてホストファミリーを呼ぶことになっている。沢山の方々が来られるであろう。是非ともサヨナラパーティを成功させたい。 |