3月30日水曜日、今日も小雨の曇り空。しかし雨といっても日本のようにザーッと降ってくる感じではなく、どちらかというとサラサラと小さな雨で湿気も少ないせいかそれほど不快には感じない。しかしそろそろ太陽が恋しくなってくる。晴れた日には日本の富士山より高いというマウント・レーニアが雪化粧した姿で遠くに見えるというが、お天気のせいでこちらに到着して以来いまだお目にかかれていない。帰るまでには一度は目にしたいものだ。さて、学校3日目になるとみんなもうだいぶ雰囲気にも慣れた様子で、元気に集合場所の教室に入ってくる。みんなの健康状態や問題ないかを確認しながら、日記を受け取り、バディと一緒に教室に散らばっていくのを見守る。
日記に、夜中眠るとき少し寒いと感じると書いている生徒がいたので、ホストファミリーに"May I have another blanket, please?"(もう一枚毛布を貸してもらえますか?)と聞いてみるようにアドバイスした。たったこれだけのことでも異国でホームステイしている者にとっては、特に自分の要求を言うのが苦手な日本人にとっては、勇気のいることなのだ。ホストファミリーは本当にみんなの役に立ちたいと思っているが、ステイしている生徒が何を欲しているのかわからない。その橋をわたすのは、ここアメリカでは言葉しかないのだ。察してもらって、言わないでもすべて思うままになるわけではない。滞在させてもらっているし、少し気が引けて言えない生徒の気持ちもわかる。でも少しでも背中を後押しして、自分の気持ちや何が必要かを言えるようになってほしいと思う。きちんと自分が何が必要かを言えること、困っているときに誰かに助けを求めること、困っている誰かを助けてあげること、こうしたことは人生においてとても大切なことになると思う。一通り日記に目を通してTCのクリスティー両先生と授業を見てまわる。
今日は文学、歴史、音楽、数学などの授業を見てまわった。文学の授業は、30人ほどのクラスで日本からの留学生アイリ、アサミ、ミオ、リサコ、ナツキ、ミツキがアメリカの学生たちと机を輪のように並べて熱心に授業に参加している姿が見られた。授業の中でマイクを回してひとりひとり発言していくところがあったが、みんなちゃんと英語で発言し、マイクを次の人に渡していく姿は、見ていて本当に立派にうつった。他の教科も、わからないから眠っているというような生徒はひとりもおらず、何とか理解しようと真剣に授業を聞いている姿はとても誠実で、頼もしく見えた。そして隣にはいつもバディがいてくれる。みんなもバディを頼りにしているし、いつもそばにいてくれることに感謝していることだろう。
今日は昨日に引き続き、午後から学校を出て活動があるのでみんなファーストランチを食べる。こちらのランチタイムはファーストランチとセカンドランチの2回に分かれていて混雑を緩和しているのだ。いつもはバディの時間割にあわせてファーストかセカンドかどちらかでランチをとっているのだが、今日はみんなで12:30に学校を出発するのでそれにあわせてみんなファーストランチをとって、ほぼ時間通りに学校を出発することができた。
今日の行き先はワシントン州の州都であるオリンピア。ワシントンというとマリナーズのイチロー選手が活躍するシアトルが有名だが、州都はオリンピアだ。今日はそこで州議事堂と、州知事公邸を見学するのだ。移動して車を降りると小雨がぱらついているが、議事堂まで続く芝生に桜の並木道の向こうに見える石造りのドーム型の州議事堂はとても絵になる姿だった。高さは87mもあり、世界でも最も高い石造建築ドームのひとつだという。中に入ると、高い天井の円形広場の広々とした空間、ケントはあたりを見渡して「全部大理石っすよ、、、」と感嘆の声をもらしていた。議事堂内にアメリカの初代大統領G.ワシントンの胸像があり、大きな鼻をこするとグッドラックがあるとTCのジェニファー先生に教えられた生徒たちはみんなで鼻をごしごしさわっていた。ワシントンの鼻はこれまでの見学者にこすられすぎて、そこだけぴかぴかになっていた。上院と下院の傍聴席も自由に見学することができ、立法手続の多くはこの傍聴席から見ることができるという。議事堂内は写真撮影も自由に許可されており、生徒たちはみんな見学したり写真を撮ったりして楽しみながら学んでいた。
そして次はいよいよ州知事公邸だ。ここは州知事が実際に住んでいる場所の一部を一般に公開しているもので、セキュリティチェックも厳しい。生徒たちはなかったが、大人たちは身分証明を提示して中に入る。私もパスポートの提示を求められた。みんなの様子もこれまでとは違いちょっと緊張した感じになった。保安官が食事、飲み物、銃器の持ち込みがないかを確認した後、バッグ類やカメラを入り口で預けて中に入る(カメラの撮影は安全上の理由で一切許可されないので、皆さんに内部の写真を届けられないのが残念です。外からの撮影は可で、活動写真中のオレンジ色のレンガ造りの建物が州知事公邸)。中に入るとガイドがいて、玄関、応接間、図書室、居間、画廊、2階の客寝室、食堂、舞踏室、と案内され公邸見学のツアーの後には、みんなでゲストブックに自分の名前をサインした。案内は当然全て英語でなされるが、生徒のみんなは本当に熱心に耳を傾けていた。通訳はおらず、自分で理解しようとするしかない。誰かが通訳してくれるなら、話は簡単だ。しかしそれでは何も残らない。わからないなら今はそれでもかまわない。わからないことを体験すること、そして留学が終わってそれをばねにして真剣に学問に取り組むこと、この留学をそのきっかけとすること、そのことの方が通訳を通したその場かぎりの知識を聞くよりも大切になると思う(施設の注意事項や、生徒の安全に関わることなど全員がもれなく理解しないといけないことについては、こちらで念のため通訳しています)。帰りに州議事堂前の正面玄関前の階段で全員記念撮影をして見学ツアーを終えた。
学校に戻るとスクールバスの出発する時間となり、みんなそれぞれバスやホストファミリーの迎えの車に乗ったりしてホストファミリーのもとへ帰っていき、今日一日も終了。こちらに来る前は他人同士だった生徒たちもだいぶ打ち解けて、みんなでいるときはおしゃべりで賑やかだったり、一緒にうたったり、とても楽しい雰囲気になってきました。学ぶところは学び、メリハリもきいています。残り少ない留学生活を少しでも充実したものにできるようにこれからもサポートしていくつもりです。
最後になりましたが、もうひとつ、日本の東北部を襲った地震と津波の被災者のための募金が校内で呼びかけられており、集められたお金を朝、学校事務所前で透明なパイプ状のものに先生と生徒がつめている姿が見られました(活動写真ご参照)。こちらでも日本を襲った未曾有の大災害への関心はたいへん高く、日本のために何かできることをしたいと募金を生徒たちに募ってお金が集められているということをこちらの校長先生からも聞きました。日本人として本当に感謝の気持ちでいっぱいになり、何もできませんが感謝の気持ちをせめて一生懸命学ぶ姿をみせることでお返しできたらと思います。では、今日のレポートはこれにて終了します。
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